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1日目はクラス行動。
観光地をまわって買い物したり、昼飯は現地で有名なレストランに行った。
どこを見ても英語…そして外人。右にも左にも外人。
出てくる料理はボリュームが凄くて、美味いんだけど重たい。それをガツガツ食べれる拓海は順応性が高いと思った。
昼飯の後はショッピングセンターで少し自由時間になった。それぞれが色んな方向へ消えてく中、俺と拓海、歩のいつもの3人が残る。
「なぁ。どこ行く?!」
パンフレットを広げて楽しそうに聞いてくる拓海に、歩はチラッと視線を向けて歩き出す。
「え、歩!」
「俺買いたい物あるから」
歩はスタスタと迷うことなく進んでいく。初めての場所のはずなのに、まるで知っているかのようなその行動。
ここで置いていかれたら俺と拓海じゃ絶対に迷子だ。急いで歩の後を追いかければ「なんでついて来るんだよ」と嫌そうな顔をされた。
「歩!置いて行くなよ!」
「別に好きなとこ行ってもいいだろ。買い終わったら戻るからお前は拓海とアイスでも食っとけ」
注意すればついてくるなというニュアンスで返される。
「なんで?一緒に行けばいいじゃん」
「俺が嫌だから」
拓海の言う通りなのに歩は頑なに頷かない。歩くスピードを上げて俺達を振り切ろうとするけど、こっちには拓海がいる。
歩がどんなに頑張っても走るスピードで拓海に勝てるわけがない。
「なんだよ、ついて来るな!」
「なんでそんなに嫌がんの?何買いに行くんだよ?」
モール内を大声で駆け回る俺たちはかなり目立つ。他の観光客や現地のヤツらの注目を浴び、歩が諦めたように立ち止まった。
「マジうっざ…」
「へへっ!勝った!!」
今日ばかりは拓海を褒めてやりたい。やっと2人に追いついた俺を見て、歩がため息をついた。
「ついて来てもいいけど絶対に何も言うなよ」
「そんな変な店行くのか?」
「別に。でも絶対に言うな。特に慧、お前兄貴にバラしたら許さねぇからな」
キッと俺を睨んだ歩に頷く。リカちゃんには特にバレたくなくて、でもって本当は1人で行きたかった場所にようやく着いた。
ピンク色の看板を背に、歩が振り返る。
「この店」
そこにはたくさんの女の子。俺たちと同世代ぐらいの子から、女の子と呼ぶには高齢のオバサンまでたくさん。
怯む俺と拓海を置いて歩は躊躇うことなく店内へと入っていく。
こんなキラキラした店の前で立ってるわけにもいかず、急いで歩を追いかけた。
外装と同じくピンクをベースにした店の中で男3人、しかも1人は堂々とし過ぎる金髪。
かなり目立っているのに、その金髪野郎は気にもせず店の奥へと進む。
そこには、なかなかの人集りがあった。
さらに増える人の波を掻き分けていく歩の顔が怖い。無表情の中に何か熱いモノが感じられ、俺と拓海は顔を見合わせた。
あの面倒くさがりで人混みが大嫌いな歩が自分から向かっていくなんて、何を買おうとしてるのかすげぇ気になる。
輪の外で待つこと数分。ボロボロになりながら戻ってきた歩の手には真っ白の物体。フワフワした白い体に真っ白な服を着てカラフルな花束を持つ物体。
「歩……それ、何?」
俺が思ったのと同じことを聞いた拓海に歩は答える。
いつも通り、なんて事無いようにサラッと。
「幸せを呼ぶクマさん。オーストラリア限定花嫁バージョン」
「それは見たらわかるんだけど…それがどうした?」
「絶対に買ってこいって桃さんに言われた」
顔の高さまでクマを持ち上げ、手に入れた満足感に誇らしげに笑う歩。そこに俺たちをからかう歩の影は無い。
初めての海外は、見えないところであの歩でさえ舞い上がらせていた。
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