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いつの間にか寝ていた俺が目を覚ましたのは昼過ぎ。カーテンの隙間から差し込む日差しが強くて目が上手く開かない。
「腹減った…」
いつもなら俺を起こすのはリカちゃんの役目で、昼飯を用意するのもリカちゃんの役目で、この後の予定もリカちゃんと一緒。
こうやって考えると俺ってリカちゃんがいないと本当に何も無い。
自分で用意した昼飯は嫌いな野菜だって出てこないし苦手な納豆だって無い。適当にあったパンを食べるだけ。気楽なはずなのに気分は重たい。
なんにもすることが無くてスマホを手に取った。歩…は桃ちゃんと一緒かもしれないし、拓海は多分家でバタバタしてそう。ほら、遊ぶ友達もいない。
本格的に暇になってどうしようかと悩んでいたら着信が来た。リカちゃんかと思って慌てて見てガッカリする。
「はい」
『慧、帰ってきたなら連絡ぐらいしろ』
俺に電話してきたのは恒兄ちゃんだった。そういや帰国したら連絡するように言われてたような気もする。
『まったく…本人が忘れててあの人が覚えてるってどうなんだ』
「あの人?」
『獅子原先生。昨日、父さん宛に無事に着いたって連絡あったんだよ』
また陰でそういうことして…俺の知らないところでリカちゃんは俺の為に動いてる。それなのに俺のことはいらないって言う理由がわからない。
黙っている俺に恒兄ちゃんが話しかけてきた。
『慧、今日の予定は?』
「無い…けど」
『それじゃあ迎えに行くからおいで。今日は父さんも俺も休みだから』
正直父さんには会いたくない…けど、一応はお土産買ったし迎えに来てもらえるならと頷こうとして思い出した。
「やだ。あの女いるんだろ?」
『あの女…あぁ、母さんか』
「なんで恒兄ちゃん平気なんだよ。あんな女が家にいて嫌じゃねぇの」
あの女に捨てられたのは俺だけじゃない。父さんも兄ちゃんも同じはず…それなのに、どうしてまた一緒に暮らせるのか理解できない。
『母さんなら今日は夕方までいないよ。まだ会いたくないなら戻ってくる前に送るから』
「まだじゃなくて一生会いたくない」
恒兄ちゃんは嘘を吐いたりしない。だからいないって言うなら本当にいないんだろう。
行くって答えた俺に兄ちゃんは着いたら連絡すると言って電話を切った。
簡単に用意して土産を持って、一応…とりあえず、ってか念のためリカちゃんにも家に帰ることをLINEしておく。もしかしたら夕飯の用意とか買い物に誘われるかもしれないし。
でもやっぱり返事はなくて、既読かどうか確かめるのも怖くて見れない。
ぼんやり外を眺めながら恒兄ちゃんの話をなんとなく聞いて家へと向かう。
リカちゃんの方が運転も話も上手かった。
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