アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
619
-
「慧、ちょっと」
HRが終わってリカちゃんが出て行ってすぐ歩が俺の席まで来る。歩から来るのは珍しくて、俺の周りのヤツらがそわそわしだした。
「なに?」
「1時間目サボるぞ」
俺の返事を聞く前に腕を掴んだ歩は強引に俺を引っ張って行こうとした。
「待てって、サボっていいのかよ」
「学年集会なんてダルくて出れるか」
「お前、素行直せって何回も言われてるだろ!!」
ぐいぐい引っ張って行こうとする歩に抵抗した…けれど、俺よりも歩の方が力が強くて敵わない。その後ろをついて来る拓海が「悪いけどごまかしておいて」って頼み込んでいた。
歩が俺を連れて来たのは屋上。いっつもここだ。
むしろ、ここしか行くとかないのかって思ってしまう。
「なんだよあれ」
「あれって?」
「さっきのHRに決まってんだろ。お前、兄貴と何があった?」
歩に勘付かれるのも無理ない。HRの間、リカちゃんは俺を1度も見なかったから。
いつもならニヤッてしてこっちを見るくせに今日はそれが無かった。
本当にただの先生と生徒…それ以上でも以下でもない。
「別に…あれが普通だし」
「お前らにとっては普通じゃないだろ。いつもバカみたいに見つめ合ってるくせに」
「バカって言う方がバカだって教わらなかったのか?」
歩の無言の視線が「そんなのどうでもいいから吐け」って訴えてくる。追いついて来た拓海も隣に立ち、見つめてくるから俺は逃げられないなって諦めた。
「ちょっとケンカしただけ」
「嘘つくなよ」
「嘘じゃないし」
歩と睨み合っているとやっと拓海が口を開いた。にこにこ笑いながら、いつものトーンで。
「内緒にすんならリカちゃん先生本人に聞くからいいよ」
「は?」
「慧がもうリカちゃん先生の顔も見たくないって言ってたけど、どうしたの?って聞くからいい」
すげぇ笑顔で何言ってんだ?首を傾げる俺に拓海は続ける。
「なんなら合コンしたいって慧が騒いでるって付け足そっか?」
「いや……お前、何言ってんの?リカちゃんとまともに話せないだろ」
「別に平気。だって俺怒られる理由ないもん」
確かにそう、だけど。でも今サボってんのが十分怒られる理由になるのに?
「ちなみに今サボってんのも慧のせいにするからな!俺と歩で必死に説得してたって言う」
「はあ?!なんで俺が…」
「嫌なら早く言って。俺、今日は朝飯食ってないからちょっと機嫌悪いよ」
俺は黙って歩を見た。歩も俺を見る。
ビビりでバカで、うるさくてあんまり怒らない拓海…なのに。
俺たちの目の前にいるのは別人のように見えた。
「けーい、どうする?」
拓海がいつもの拓海じゃない。
俺と同じで驚いて固まる歩に、3人の中で1番強いのは拓海なのかもしれないと思った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
619 / 1234