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リカちゃんから離れて何日が経っただろう。もうすぐ期末テストが始まってそれが終わったら冬休み。冬休みにはクリスマスもお正月もある。
本当ならリカちゃんと過ごすはずだったイベントを俺は1人で過ごさなきゃいけない。
「慧、暗い」
どんより考え込んでいた俺の頭を歩が叩いた。そうだ、今はそれどころじゃない。
「お前さぁ…勉強教えてくれって言ったくせに違うこと考えてんなよ」
今日は学校が休みだから俺はテスト勉強の為にここへ来ていた。1人じゃわからないし、かと言って前みたいにリカちゃんに聞けないし……そうなったら俺が頼るのはこの人しかいない。
「全然進んでねぇじゃん」
「うっせぇな。お前は自分の分してろよ」
「は?教えてもらってるクセになに偉そうなこと言ってんだよ」
「俺が教えてもらってんのはお前じゃねぇだろ!!」
いくら歩の成績が上がったからって俺が頼るのは歩じゃない。絶対にコイツにだけは聞きたくない。
「もう!またケンカ?ダメよ歩ちゃん」
「…なんで俺」
「だってウサギちゃんより歩ちゃんの方がいじめっ子に見えるもの」
俺が頼ったのは桃ちゃんだ。
弁護士なだけあって桃ちゃんはすっげぇ頭がいい。しかも誰かさんと違って意地悪もしないし丁寧に教えてくれる。誰かさんみたいに「バカ」を連呼したりしない。
でも誰かさんみたいに問題が解けた時に嬉しそうに笑って褒めてくれはしないけど…。
「ウサギちゃんも休憩しましょ」
「コイツは常に休憩してる」
「歩ちゃん!!いちいち余計なこと言わないの!」
桃ちゃんに勧められ、俺は開いていた教科書を閉じた。それと同じタイミングで歩がタバコに手を伸ばす。
「……慧さ、進路まだ決まってないんだろ?」
「なんで知ってんの?」
「別に」
別にって言ってるけど情報源は1人しかいない。
俺は前に出した進路志望を無しにしてほしいってリカちゃんに頼んだ。3年に上がるまでにちゃんと出すからって言った俺にリカちゃんは「わかった」とだけ答えてそれ以上は何も言わなかった。
「どうすんの?」
「どうって…別に」
「素直じゃねぇヤツ。やりたいことやればいいじゃん」
やりたいこと……無いわけじゃないんだ。でもそれが俺の本当にしたいことかって聞かれると自信がない。
「ウサギちゃん何かしたいことあるの?」
「したいこと…っていうか……まだわかんない。気になるってだけ」
「あら。それでいいじゃない。実際に触れてみないとわかんないわよ。あたしだって弁護士になるって決めたのは大学に入ってからだし」
歩が興味無さげにしながらも聞き耳を立ててるのがわかる。
「とりあえず法学部に入って、合ってないと思ったら違うことしようと思ってたもの」
「そうなの?」
桃ちゃんが頷いて俺を、そして歩を見た。
「今すぐに答えを出さなくていいのよ。今はしたいと思うことを試す期間」
「試す…」
「それで合ってなかったら違うことを探せばいい。時間はたっぷりあるじゃない。興味あるならなんでもチャレンジあるのみよ!」
興味…はある。もしかしたら途中でやめたくなるかもだけど。
リカちゃんの話、母さんの話、そして星兄ちゃんの話を聞いていつも思ってた。
みんな理由は違うけどその仕事をすげぇ大切にしてて…嫌なことがあっても続けてる。
俺にとって1番近くて1番触れてて1番関わってる仕事。
良くも悪くも俺に1番影響を与えた人たちが揃ってしている仕事。
「……教師…が気になる」
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