アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
643
-
「ところでお夕飯はどうする?」
「ラーメン」
「はい無理。だって歩ちゃんってばお店のクオリティ求めるでしょ?今から出汁なんて取ってられないわ」
歩のラーメン好きにすっかり慣れた桃ちゃんが冷静に答える。それに舌を打ちながらも歩は「焼きそば」と答えた。外に食いに行かずに桃ちゃんの手料理を選ぶなんて歩らしくなくて、けど仲いいなと思った。
「ウサギちゃんもそれでいい?」
「ううん。俺はもう帰る」
この後の予定なんて無いし、帰ってもリカちゃんが晩飯を作って待っててくれてるわけでもない。
実はちょっと…本当は結構この2人を見てるのが辛かっただけだ。
「帰れ帰れ。帰って必死に勉強しろ」
「歩ちゃん!」
「だってコイツ今から頑張らなきゃ受かるわけねぇもん」
歩の言う通りだ。もし本当に歩と同じ大学を受けるなら俺は真剣に頑張らないといけない。歩には桃ちゃんがいるけど今の俺にアイツはいないから…もっと頑張らないと。
「おじゃましました」
「また来てね。あたしでよかったらいつでも頼ってね」
桃ちゃんは最後まで俺にリカちゃんの話をしなかった。きっと歩かリカちゃん本人から聞いてるはずなのに…それは桃ちゃんの優しさだろう。だから俺も自分からは何も言わずに笑って手を振った。
外はすっかり陽が落ちていて街灯が道を照らしている。
この道を帰るように、俺も自分の選んだ先へ向かって歩いて行かないといけない。
1人のようで1人じゃない。
それがまだ正解かどうかはわからない…けど。
「やるしかないよな」
前ほど心細くないのは、きっと俺が少しだけ前に進めたから。そして左手首に巻かれたブレスレットが今日も俺を守ってくれているからだ。
*
「ねえ桃さ…」
話しかけてきた歩ちゃんに向かってあたしは電話中であることをアピールした。かけて数コールで出た相手はもちろん1人しかいない。
『はい』
「あたし。今帰ったわよ…ってなんなの、あんた変態からストーカーに進化したの?」
『うっせぇな。こんな暗い中帰るなんて危ないだろ』
「危ないって…まだ夕方の6時よ?男子高校生相手に何言ってんのよ」
電話口の相手が黙った。いつもはレスポンスの早いリカが黙るってことは自覚はあるのだろう。
「本屋に寄るかもって言ってたけどそこまで遅くならないと思うわ」
『わかった。あ、アイツ飯は済ませた?』
「まだよ。あんたストーカーの次はお母さんにでもなるつもり?」
帰宅時間を心配して、食事の心配までするリカ。 よくもまあそんな状況で離れようなんて言えたものだと思う。それがウサギちゃんの為だからって…本当にリカの溺愛っぷりと健気さには涙が出そうだ。
軽く礼を言ったリカが電話を切り、あたしもスマホを置いた。それと同時に背中に抱き付いてくるのは拗ねた年下の恋人。
「電話終わった?」
肩越しに振り返って見た歩ちゃんは少し拗ねたようなジト目でこちらを見てくる。それが可愛くてあたしの頬が緩んだ。
「ええ。ごめんなさいね」
「別に」
歩ちゃんが顔をそらすと、その動きに合わせて金色の髪が揺れる。キラキラ綺麗で華やかなそれは歩ちゃんに良く似合う。
「本当、あのリカが純愛だなんてねぇ……」
人は変わるものだと思った。お世辞にも褒められた付き合いをしてこなかったリカが、自分を殺してまで相手を優先するなんて昔からは想像つかない。
「俺らだって純愛じゃないすか」
抱きしめる力が強くなったと思ったら歩ちゃんはあたしの腰に回した手を妖しく動かす。
「桃さん…いつになったらヤらしてくれんの?」
「なっ!それは、その」
「まだダメなの?」
ダメじゃない…けど。さすがにあたしも我慢させちゃってるのはわかってるんだけど。
こんなにも格好よくて可愛い歩ちゃんを抱けるかって言われると緊張しちゃうんだもの。
「まだダメ」
「桃さんのケチ」
歩ちゃんは強引だけどあたしがいいって言うまでは絶対に手は出してこない。そうやって相手を大切にするところは兄弟似ている。
「上手くいってほしいものね」
「いくでしょ。あの兄貴がヘマするわけないし」
「本当に歩ちゃんってリカ好きよね」
「好きじゃねぇよ」
今日は3人でのお勉強だったけれど次は豊やたっくんも入れて6人で過ごしたいと思った。
「桃さん」
歩ちゃんに呼ばれて振り返る。すぐに重なってくる唇に目を閉じた。
もちろん腰の辺りを妖しく動く手はしっかり抓り上げてやったわ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
643 / 1234