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「俺の気持ちは変わってない。むしろあの時より強くなってる」
握った手にギュっと力を込めたリカちゃんが俺の身体を離す。少しだけ空いた距離が寂しいけれど、それでもまだ手だけは触れたままだ。
「悔しいけど歩の言う通りだな。お前の為だって言って俺はただ幻滅されんのが怖かったのかも」
「幻滅?」
リカちゃんのどこに幻滅するところがある?確かに変態で性格悪いし、やたらエロいし頭の中は人を苛めることとエロいことしかないけど。
でもそれ以外は完璧過ぎるぐらいなのに。
ポケットを探ったリカちゃんがタバコを取り出す。俺をチラッと見て、その次に握った手を見て困ったように笑った。
「今はこのまま吸っていい?」
俺が頷いたのを確認して火を点けたリカちゃんが一吸いして紫煙を宙に吐き出した。灰皿を引き寄せてそこにタバコを置き、また俺に向き直った。
「由良は、あいつは俺と歩の従兄弟で普段は関西の方に住んでる。ほら、俺が夏に帰省しただろ?あの時に会ったのが由良」
「それって大嫌いなヤツに会いに行くって言ったやつ?」
「そうそれ。ちゃんと覚えてて偉いな」
さり気なくバカにされた気もするけど、いつものリカちゃんが戻って来た感じがした。
「あいつとは実家に帰ったら顔を合わす程度なんだけどな。なんか昔から突っかかって来て鬱陶しくてさ」
「じゃあ、なんで」
じゃあなんで付き合った?嫌いなヤツなのに付き合う理由って何?
続きを促す俺にリカちゃんはまたタバコを吸う。今度はさっきより長く吸い込み、時間をかけて煙を出す。
「正確には俺とあいつとは付き合ってなんかない。少なくとも俺は恋人だと思ったことはない」
「恋人だと思ったことない…ってなに?」
「ただヤるだけ。抱いてくれって言ったから抱いた。それだけの関係」
恋人だったって聞かされるのは嫌だ。けれど、リカちゃんにそういう相手…セフレみたいなのがいたって聞くのも嫌だ。
もう……全部やだ。
「由良とは実家に帰った時だけの関係で、お互い別に相手がいた時もあったし、それをどうこう思ったことはない」
「それどういう意味?」
由良さんに恋人がいても平気だったのか、自分に他に恋人がいても由良さんと関係を持つのが平気だったのか。
「両方。最低だろ?」
「……そうだな」
「どうでも良かったから。あの頃は求められればそれで良かった」
タバコを吸い終えたリカちゃんがそれを消し、灰皿を遠ざけた。
「そういうのを数年続けて、俺は留学と向こうは家業で忙しくなって実家にも寄り付かなくなった。俺達の関係はあって無いものだったからそれでいいと思ってた」
「自然消滅的な?」
「まあ近いかな。けど俺が本格的に教師を目指すってなってから由良は変わった。昔からおかしな男だったけど酷くなった」
歩が言ってた『ストーカー』の言葉。わざわざ俺に近付いてきた由良さんの行動。
「由良は元々俺をすっげぇ嫌っててさ。何かにつけて文句言われて嫌味言われてしてたんだけど、それが暴言に変わったな。まるでゴミ扱い。それなのに抱けって迫ってくんの」
ちょっと待て。それって、それって…。
「俺の周りにも暴言吐いてさ。気に入らねぇことあるなら俺に言えばいいのに…って十分言われてんだけど。その上周囲にまで当たり散らす意味わかんねぇだろ」
なんでわかんないんだろう。すっげぇわかりやすい由良さんの行動に、どうして鋭いはずのリカちゃんは気付かないんだ?
「だから言ってやったんだよ。俺はお前を好きでも嫌いでもないし興味ないって。でもあいつは理解しねぇんだよ」
わかりやす過ぎる由良さんの行動。それは俺と同じ人種だからだ。
言いたいことと違うことを言ってしまって、でも気付いてほしいから構ってほしい。こっちを向いてほしいから必死になる。
由良さんは、ずっとリカちゃんが好きだったんだ。
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