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眉を顰めて嫌そうにするのはブロッコリーの夢を見ているからだろうか。俺の名前を呼んだってことは、夢の中でそれを無理に食べさせているのは自分で間違いない。
寝返りをうったウサギの口がまた動く。
「やだ、って……ブロ………やだ」
「お前の中の俺ってどれだけ性格悪いんだよ」
たくさん情けない姿を見せた。
泣いたし怒りで我を忘れたし、照れて焦って必死にもなった。他の誰にも見せない姿ばかり出してしまった。
他人なら感情を理性で殺せる。完璧でいることも相手が望む自分を演じるのも得意だ。
それがウサギの前だと簡単に剥がれてしまう。
見せたくない姿ばかりを晒し、知られたくない本音を零した俺は今こいつにどう思われているか不安になる。
無駄だと思っていても知りたいのが人間の性だ。隣で夢の中の俺と戦っているお前に問いかけた。
「こんな俺は嫌い?」
最初に離れるのを決めた時。あの時は嫌われてもいいと思った。それでもやり直せるよう頑張るつもりだった。
でも今は嫌われたくない気持ちが強すぎて怖い。
寝言でいい。覚えてなくていいから…首を振るだけでいい。たった一言、嫌じゃないって言ってくれたらそれで満足だ。
「あと何をすれば選んでくれる?」
相手は眠っているのだから答えは返ってこないだろう。そんなのわかりきってる。
それでも確かめてしまう情けない自分に嫌気がさして、このまま眠って忘れてしまおうと思った。
きっと今夜は眠れる。何よりも安心できる存在が近くにいてくれるから夢もみなくて済む。
もぞもぞと動き、たまに寝言を言ったり唸ったり忙しいウサギを抱きしめつつ俺は徐々に意識が落ちていく。
久しぶりの穏やかな眠気がやってきたと思ったら、その穏やかさが瞬時になくなった。
「…き」
微かに聞こえた声。
「き………す、き」
聞き間違いなんかじゃない。俺はお前の声を逃したりしない。
「リ、カちゃん」
呼ばれた名前に確かにあったはずの眠気が吹き飛んだ。起きてるのかと腕の中にいるウサギを盗み見るとしっかりと眠っている。
「やっばぁ……調子になんか乗るんじゃなかった…」
寝言だけでこんなにも過敏に反応してしまうなんて俺は大丈夫なんだろうか。ウサギがまた俺を選んでくれたら今度こそ狂ったように求めて追いかけ回す自信しかない。
重いのを通り越し、病的なほどのめり込んだ自分自身が少し怖いと思ってしまった。
完璧に冴えてしまった目に映るのは気持ちよさそうに眠る俺のウサギ。寝ていても人を振り回してくれる生意気な俺だけのウサギ。
「す……き、リカちゃん」
留めの一言で俺の夜更かしは確定だ。
こんな状態じゃ眠れない。こんな、こんな……
「好きって言われて勃つとか俺も若いな」
明らかに熱の集まった下半身が主張を始める。さっきまでは天国だったこの状況が一変して地獄に変わった。
どうやら俺はお前の言った通り地獄行きらしい。それがわかっていても抱きしめた手を離したくなくて寝顔を見つめた。
ふにゃっと垂れた眉が少しすると吊り上がる。かと思いきや嬉しそうに緩む。それが見ていて飽きなくて、けれど反応した下半身が気になる。
離れなくない、でも眠れない…スッキリするのを優先するか、それともこの時間を1秒でも長く過ごすか。
悩んで出した答えはやっぱり耐えるだった。
小悪魔は夢の中のブロッコリーと戦っていて、時々顔を顰めてそのうち穏やかに眠る。
結局、俺が眠りにつけたのは明け方近く。ウサギが起きる前にベッドから抜け出して支度を終えソファに沈む。
1日の始まりにどうしてこんなに疲れてるのか…その理由は自制心の弱い自分の所為だ。
そろそろ起こそうと寝室に戻り、掛け布団を捲るとそこには俺の使っていた枕を抱きしめて眠るウサギの姿があった。見ていないふりをして叩き起し、なんとか気付かれずに家へと帰らせた。
部屋で1人、煩悩を消すためにタバコに火を点ける。その隣にはいつもは慰めてくれる、うさぎのぬいぐるみ達。
冷めきったコーヒーよりも冷たい視線を感じながら深いため息をつき、今日も新しい子を買いに行こうと心に決めた。今の俺にお前が寝てたベッドは毒にしかならない。
「シーツ……変えてる時間ないし今日はもういいか…」
自分とぬいぐるみに言い聞かせるように呟き、時間ギリギリに家を出た。
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