アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
727
-
部屋の中には何人かがいて、けどリカちゃんの目的の人物はすぐわかった。
1番奥で正座していた人。小柄で優しそうなお爺さんとリカちゃんが見つめ合う。
「廊下は寒いだろう。中へお入り」
手招きされてまずリカちゃんのお父さんが部屋に入る。てっきりお爺さんの前に座ると思ってたのに、なぜかお爺さんの隣に座った。
俺の横に立っていたリカちゃんが「バレバレかよ」と小さく呟いた。
俺の腰に回るリカちゃんの手。それを退けようとすれば笑って首を振ってくる。みんなの前で堂々と俺を抱いたまま、リカちゃんは1歩踏み出す。つられるように俺も。
そしてお爺さんの目の前まで来たリカちゃんが深く一礼した。
お爺さんに向けて。そしてお父さんに向けて。
誰も動かない静かな部屋の中で、リカちゃんだけが頭を下げた。
「とりあえず2人とも座りなさい」
促されて座ったけれど周りからの視線が痛い…気がする。それは絶対に俺に向けてだ。
明らかに年下の俺とリカちゃんの関係をどう思われているのかが不安で仕方ない。
「その様子じゃ由良は説得に失敗したようだな。その返事かい?」
「それだけじゃなく全ての返事に来ました」
お爺さんに答えたリカちゃんが俺を見る。そして、またお爺さんに向き直った。
「俺は」
リカちゃんが何かを言おうとしたのをお父さんがそれを遮る。
「おっと!その前に自己紹介がまだだね。天使ちゃん、この爺さんが私の父親、つまり理佳の祖父。父さん、理佳の隣に座っている天使ちゃんが理佳のハニーらしい」
いきなりのカミングアウトにざわつく周囲。どこに自分の息子が男と付き合ってるって言うバカが……と思って気づいた。
「なんで知ってんの?!」
なんで俺とリカちゃんが付き合ってることを知っているのか。そんな話なんてしてなくて、さっき会ったばっかりなのに…俺はまだお父さんの名前だってまだ知らないのに。
つい大きな声が出てしまい、口を押えた俺にお父さんは笑う。
「夏に理佳と会った時に随分と惚気られたからねぇ…。さっきだって十分なぐらい見せつけらてれるし」
「な…え、嘘だろ?」
隣に座るリカちゃんを見上げれば焦りもせず、飄々としていた。
「なんで隠す必要あんの?」
「いや、なんでそんな堂々と出来んだよ……」
「別に悪いことなんて何もしてないしな。恋愛は自由なもんだろ」
生徒に手を出したところは悪くないんだろうか?言えばややこしくなる気がして俺は黙った。その判断は正しかったらしく、リカちゃんが俺にだけ見える角度でニヤッと笑った。
ゴホンと咳払いをしたお爺さんが俺を見る。厳つさは無くて怖くもないのに、変に緊張してしまって崩れかけていた足を正した。慣れない正座にこの雰囲気…俺の緊張は限界を超えてしまっていた。
「こんな遠いところまで来てもらってすまないね」
そうやって言ってくれる声は優しいのに鋭い。嘘なんかついたら一発でバレそうだなってわかる。
リカちゃんが俺に、素直に答えたらいいって言った理由がわかった俺は小さくお辞儀だけを返した。
お爺さんの視線がリカちゃんに移動して、やっと息が吐ける。
「で、その返事って言うのを聞こうか」
静かな部屋の中でリカちゃんが動く衣擦れの音だけが聞こえて、俺たちとお爺さんの間に折りたたまれた紙が2つ現れる。
リカちゃんがジャケットの内ポケットに忍ばせていたそれを置く。
折られたそれは何かわからなくて、何も見えなくて、でもこれが渡したい物…なのは確かで。
その正体を知っている唯一の男。俺の隣に座って真っすぐにお爺さんを見つめる男がはっきりと言い切った。
「絶縁してください。もう金輪際この家には上がらないし関わらない……それが答えです」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
727 / 1234