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既にリカちゃんとお爺さんの会話を知ってるように見える由良さん。きっと付き人っぽい人が連絡したんだろう、その目が歪んだままリカちゃんから俺に移り、さらに鋭くなった。
「俺は全部破棄したし縁も切られた。もうここに来ることもない……これでお前は満足なんだろ?」
リカちゃんが話しかけても由良さんは俺だけを睨み続ける。
なんでも1番じゃないと気に入らない由良さん。リカちゃんが持ってるもの全部を欲しがる由良さん。そのリカちゃんが由良さんと関わるもの全部を失えば、由良さんは自動的に1番だ。
やり方は荒っぽいけれど由良さんは全部手に入れる…家も立場も権力も、リカちゃん以外のものを手に入れることが出来る。
リカちゃんが問いかけたのに由良さんの視線は俺からそれることはない。お前の所為だって責めているのが丸わかりなまま、ずっと俺だけを睨みつけていた。
それから庇うようにリカちゃんが真ん前に立つ。
「もう俺とお前には何の関係もない。二度と会うこともないし会いたいとも思わない。全部終わりなんだよ、由良」
「そんな屁理屈なんか通用せぇへん!!」
「屁理屈じゃなくて現実なんだって。爺さんが決めたことなんだからお前は従うしかないだろうが」
「俺のおらん時に済ますなんて卑怯や!」
あまりにも子供っぽい由良さんの言い分に、俺の隣にいたリカちゃんのお父さんが吹き出した。肩越しに睨んできたリカちゃんに小さく謝って平然を装う。
「なんでやねん…俺とおった方が楽やのに」
「何言ってんだよ。お前はこれから結婚して家継ぐって決めたんだろ。自分で決めたことには責任を持て」
「それは…、でも」
「あれも欲しい、これも欲しいなんて絶対に叶わない。自分にとって何が1番大切か考えた結果の行動がこれだからな」
全部を欲しがった由良さんと本当に欲しいものだけを選んだリカちゃんは真逆だ。けれど、いつだって由良さんの矢印はリカちゃんに向かってる。
由良さんが何を手に入れても満足しないのは本当に欲しいものを手に入れられないから。
何かすればするほど由良さんはリカちゃんから遠くなる。それを由良さんも知っているからこうやって必死なんだろう。
悔しそうな顔で立っているのを見ると、俺と由良さんはやっぱり似てると思った。
由良さんを見ていると、満たされないものを他で埋めても虚しいだけなんだって気づかされる。
自分の不安を埋める為にリカちゃんを求めても、なんの解決にもならないんだって気付けてよかったと思った。
今まで由良さんと対峙した時とは違うリカちゃんの様子。刺々しさはなく、言葉を荒げることもない。それでも見えない距離をとって由良さんを近づけはしない。
「…俺は1番になりたかっただけやのに」
「なったじゃねぇかよ。もう誰もお前の邪魔はしない、全部お前の思い通りだろ」
まるで言う事をきかない子供を諭すようにリカちゃんが呆れた声を出した。腰に手を当てるその態度から「面倒くさい」が溢れ出ている。
砂利が踏まれる音がして、次に大きな声がリカちゃんの向こうから聞こえた。
「でもお前は違うやろ!お前は俺が何しても1番には見てくれへんかったやろ!!」
早足で歩いてきた由良さんがリカちゃんの服の襟を掴んむ。下から睨むその顔は今にも泣きそうで、必死な様子がわかる。
これが最後なんだってわかった由良さんになんの遠慮も配慮もない。ただ思ったことを思ったまま口にするだけ。そういうところも、やっぱり俺と似てる。
「なんで俺じゃあかんねん…俺の方がお前を知ってんのに。俺の方がわかってやれんのに」
「由良?」
「この俺が年下の、しかも男に身体を許すなんてありえへんやろ」
消えそうな声で、震えながら告げる由良さんを見下ろしていたリカちゃんが、瞬きをしてこっちを振り返る。
「……マジで?」
リカちゃんの問いかけに、俺とお父さんが同時に頷いた。
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