アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
758
-
*
想像以上に激しかった風呂を終えた俺は、リカちゃんに服を着せてもらいソファに沈んだ。
黙って引っ越すんだと勘違いし怒って、けれど実際は一緒に住むことになって…ついテンションが上がって求めてしまった自分が憎い。でもそれ以上に容赦なかったアイツが憎い。
そんな絶倫野郎は鼻歌なんか歌いながら洗面所で髪を乾かしてる。ちなみに俺は先に乾かしてもらっていた。
ふらふらよろめきながらキッチンに立つ。ココアでも飲もうかと湯を沸かし、その間にマグに粉を…と思ったところで手が止まった。どれがココアなのかわからない。
棚にはたくさんの種類の缶があって、試しに開けてみたそれが何かわからない。赤いのとか黄色いのとか、白いのは砂糖か塩だろうか。
ありすぎる調味料に頭を抱える。
「…マメな男」
綺麗に整頓されてる中からまた新しい缶を手に取る。茶色っぽいそれをコップに入れようとした俺の手を、後ろから握りしめる誰か。もちろんリカちゃんだ。
「お前何してんの?」
「何って、飲もうと思って」
「それカレー粉だけど。飲んでも美味くないと思うよ」
俺が飲もうとしたそれはリカちゃんオリジナルのカレー粉らしく、カレーと言えばルーしか想像つかない俺には初めましての代物だった。
「前までこんなの使ってなかったよな?なんで?」
リカちゃんのカレーといえば市販のルーを何種類か使ったやつだ。俺はそれを作ってるのを何度も見てきた。
「最近ハマってんの。粉から作った方が美味いんだよ」
答えてくれたリカちゃんが違う棚から缶を取る。金色のそれに入ってたのは俺が求めていたもので、手早くマグに入れ、お湯を注いでくれた。7割ぐらいで止めて今度は水をつぎ足す。
「はいどうぞ」
「…ん」
熱すぎないココアは飲みやすい。濃さも俺好みで温度も抜群のそれを受け取りソファへと戻る。
チラッとキッチンを見たらリカちゃんは換気扇の下でタバコを吸っていた。
自分で洗って乾かすよりもツヤツヤしている髪。綺麗に収まっているそれを指に巻きつけ、反対の手でココアの入ったマグを持つ。
半分ほど飲んだところでリカちゃんが隣に来てテレビをつけた。時間はもう深夜で適当にチャンネルを回し、それはニュースで止まる。
残りのココアを飲みながらテレビを観ているリカちゃんを横目で盗み見る。
これからはこういう生活が続く…んだよなぁ。朝起きて学校行って、俺が先に戻って帰ってきたリカちゃんに「おかえり」って言う。
風呂に入ってからも一緒で、勉強する俺をリカちゃんが教えてくれたり一緒にテレビを観たり。もちろん寝るのも一緒。
朝から晩まで、起きても寝ても一緒の生活。ずっとリカちゃんと一緒にいられる毎日。
それを思うと緩む顔を隠すように一気にココアを飲み干した。空になったマグをテーブルに置いた俺は、そのまま倒れ込んだ。リカちゃんの太腿を枕に下から見上げる。
「もう遅いし寝る?」
「まだ。明日は何も予定ないし」
明日が終われば明後日からは旅行だ。リカちゃんが俺の為に用意してくれた服を着て、リカちゃんが俺の為に計画してくれた旅行。2人きりで新年を迎える…ってくすぐったい。
去年までは1人だった。1人でぼんやりテレビを観て、気付けば年が明け拓海から電話がくる。人混みが嫌だから初詣なんて行かないし、行っても意味ないし。
だってどれだけ願っても神様は叶えてくれない。
帰って来てほしかった人は誰も戻って来てくれなかった。だから願い事なんてするだけ無駄なんだって意地でも行かなかった初詣。形は違うけれど今年は新しい1年を祝うなんて不思議だ。
神様が叶えてくれなかった願い事を叶えてくれた人。俺の欲しかったものを全部くれるソイツの髪に触れる。柔らかくてふわふわしてて、今日も綺麗なそれを撫でた。
「リカちゃんって綺麗だよな」
艶があって細くて、真っ黒でキラキラしてる。フッと笑ったリカちゃんの指が俺の額、髪の生え際に落ちてくる。
「お前の方が綺麗だと思うけど。慧は髪も瞳も、指も声だって全部綺麗だ。可愛くて綺麗な俺の慧君」
「……誰がてめぇのだ」
パッと髪から離した手が捉えられる。
さっきまで額にあったはずのリカちゃんの長い指が俺のそれと絡まる。親指の爪から始まったキスが人差し指、中指と順番に移り、最後の小指を甘噛みして離れた。
「好き。何回言っても足りないぐらい慧君が大好き」
「あっそ」
「そういう素直じゃない、照れ屋なところも好きだよ」
止まらないリカちゃんの好き好き攻撃に居た堪れなくて身体を反転する。うつ伏せになって、そのまま眠ってやろうかと思った。
「こら慧君。寝るなら歯磨いてからな」
「……リカちゃんがやってくれんなら」
てっきり「バカか」って言われると思ったのに、次の瞬間に俺はリカちゃんの腕の中にいた。そして連れて行かれた俺は洗面台の前に立たされる。
「はい、慧君あーん」
俺の後ろのバカが歯ブラシ片手に微笑んだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
758 / 1234