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【カラ松視点】愛しさ6
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――俺は前におそ松とキスをしている
おそ松と唇が触れた瞬間、当時の記憶がフラッシュバックした。
まさか、そんな。
信じたくはないが、でもこれは紛れもない事実であって、それを忘れていたということは、おそ松は俺に薬を使っていたということになる。
薬のせいで俺は今までそのことを忘れていて、おそ松とキスをしていながら一松のことを好きだ好きだと言っていたわけか。
「大丈夫か、カラ松」
倒された状態のまま、覆い被さるおそ松にそう声をかけられ、ただ呆然とおそ松の唇を見つめた。
おそ松とキスをしてしまった当時、俺はおそ松に一松のことが好きだと言っていたはずだ。
それなのにキスをされたってことは、おそ松は俺をからかいたかったのか?
そしてからかった上で記憶を消した、と。
なんて卑怯なんだだ。
俺が散々悩んでいるときに手を出して、記憶を消して逃げて……それを今まで黙っていたのか。
そして一松のことを相談すると何食わぬ顔で俺にその薬の残りを渡したというわけだな。
そう考えると怒りがふつふつと湧いてきた。
俺は目の前のクソ長男を突き飛ばすように離した。
「いってぇ……。押し倒したのは悪かったけど、何も殴ることなくなぁい?」
おそ松が文句を言い始めたが、俺はそれを無視して家の中へと入った。
玄関の戸をわざと大きな音を立てて閉める。
と、すぐ扉の向こうのおそ松と一松の声がかすかに聞こえる。
「おそ松兄さん何したの」
「えぇー! ただぶつかっただけじゃん! 俺悪くねぇし!」
「あれ相当怒ってるけど」
「そんなの見りゃ分かる。ったく、勝手だよなぁカラ松は」
勝手なのはお前だ、と殴りかかりたい衝動を抑えてそのまま二階の寝室へと逃げるように向かった。
6人用の布団に潜り込み、考える。
今度は怒りよりも悲しみのほうが勝っていた。
俺はおそ松のことを兄として、友達として慕っていたし、憧れていた。
信頼もしていたし、期待もしていた。
あんななりだが、相談には割と真面目に乗ってくれるし、いつも名案を出してくれる。
そんな信頼をおそ松は裏切った。
なにか気の迷いならそれでいい。多感な時期だ。興味があったから、という理由ならそのときならば笑い話で終わっていた。
でも今は、俺は一松の恋人だ。
消された記憶が復活するには、それに関連する行為をしなければならない。
つまりキスを思い出すにはキスだ。
そう考えると、思い出していないだけで、俺はもっとおそ松と過ちを犯してしまっているかもしれない。
今になってキスだけの記憶が戻ったって、もう笑い話にはできない。
俺も一松を裏切ったことになる。
そして薬を使われた一松の気持ちがようやく分かった。
自分の意思を無視した犯行。
だから一松は記憶が戻ったとき、あんなに俺を怒ったのか。
すまない、一松。
じんわりと涙が溢れ、布団を濡らす。
成人男性が泣くなんてみっともないが、それでも今は止まらないんだ。
そんなとき、バッと視界が明るくなった。
「なにしてんの」
一松が布団をめくったのだ。
「見ないでくれ。今の俺は闇に沈」
「そーゆーの良いから」
そのまま、割り込むように布団に入ってくる。
隣同士寝転んだまま俺のことを見つめる一松。
「なんで泣いてんの?」
「……泣いてないさ」
急いで目元を拭う。
「嘘つき。急に態度変えられて迷惑だったんだけど」
「……」
「おそ松兄さんも機嫌悪くなったし」
おそ松の名前にまたあの記憶が。
「なにその顔。何に怯えてるわけ?」
「怯えてなんかっ」
「……まぁいいけど。てかさっきさ、玄関のとこでおそ松兄さんとぶつかってこけた時、お前キスしてなかった?」
びくり、と肩がはねた。
「そ、そそそ、そんなことは」
「へぇキスしたんだ」
「違うんだ。たまたま!」
「分かってるし、あれが故意にキスしたんだったらもっとキレてるし」
「…………」
「あのさ、黙るのやめて」
「すまない」
「謝るのも。カラ松が黙る時って、そのカラカラカラッぽの頭を無駄にフル回転させてるときでしょ?」
からからからっぽ……。
「おそ松兄さんとなんかあったなら俺に言えば。黙られるのしゃくなんだけど」
「だが……」
「言えよ」
言ってもいいのだろうか。
でも言ったことによって一松を失ってしまったら?
だめだそんなの。
それだけは……。
「ふぅん、言わないわけ?」
言い渋る俺の顔を睨みつける一松。
「じゃあ優しい一松様がクソ松のために二択にしてやるよ。言うか、死ぬか」
「極端!」
それにこの場合、『言う』を選んでも死が待っている気がする。
結局は浮気だろ……。
「5、4、3、にー……」
「まってくれ! 言うから!」
しまった。
カウントされると焦ってしまう……。
「で、なに?」
「それは……その――」
「あぁ? もっと、はっきり」
あーもう。どうにでもなれ。
「俺は、おそ松とキスしたことがあるみたいなんだ」
「は?」
「まだそうと決まったわけじゃないんだが、薬で記憶を消されていたみたいで、それがさっき……」
「なんだそんなこと」
やれやれ、と一松は俺の予想を大きく覆してため息をついた。
「俺もおそ松兄さんとキスしたことあるし」
「ハァッ!?」
「しかもカラ松と付き合ってる最中に。ほら、風邪の時」
そういえば。
あ、しかも、ディープキス……。
「おいぃぃぃい! 一松、お、お前ぇぇえ!」
「なに。人のこと怒れんの? カラ松も今記憶ないだけで、本当はおそ松兄さんとセックスしてるかもしんないんでしょ。ねぇ」
「……そ、それはしてないっ」
「ほんとに? 言い切れるわけ?」
「それは……」
布団の中で一松はじっと俺を見つめていた。そこには少しの不安も見えた。
その一松の不安を取り除くには……。
「一松、聞いてくれ」
「あ?」
「昔の記憶がもし消されていたとしても、今の俺はお前しか見えない。一松だけを愛している。これでは足りないか?」
一松は目を見開いて、小さく震えた。
そして、俺をぐっと抱き寄せ、耳元で
「合格」
と安堵してつぶやいた。
それから。
「んんっ……一松……っ」
「しーっ。下にみんないるから静かにしろ」
「だぁ……ってぇ……っ」
どうしてだかセックスしている。
1階から聞こえてくる、酔っ払い4人の豪快な笑い声。そこに混じりたい気もしないでもないが、俺は一松に離してもらえずにいる。
「なんで、こんな……っ」
「言葉だけじゃ分かんないだろ。やっぱカラダに叩き込まないとなぁ?」
一松は俺の腰を砕く勢いで、奥の奥まで入り込む。
「いちま……あぁっ」
「ちょ、締めすぎ。そんなに気持ちいいわけ? ココが」
「んっ……そ、そこっ……やっら…ぁっ」
「へぇあっそ」
「や……いちまつ……っ、そこ、ばっかぁ……」
「好きなんでしょ、ほら」
意地悪なのか親切なのか、一松は俺を気持ちよくさせることに専念していた。
俺のカラダのことなんて全て知り尽くした一松に俺の良いところを当てさせるなんてクイズにもならない。
一松は俺を乱暴に扱っているように見えて、その一松の手は俺の髪をすいていた。
「も…っもうっ……イッ――ッ!!」
「俺も……出るっ」
果てた俺の腹に一松は精液を出した。
いつもなら容赦なく中に注ぎ込むところを今回は外だ。
「何その顔。物足りないの?」
「えっ……?」
「中に出してほしかった?」
俺の髪にキスをしながら問いかける一松。
俺はそんな一松の手に指を絡めて頷いた。
「なにそれえっろ。犯すぞ」
少しきつい一松の言葉に一瞬ためらったけど、俺はそれでも一松の手を離さない。
むしろもっとその手を強く握った。
「あぁ。全部犯してくれ」
俺の言葉に一松は固まった。が、すぐに俺の頭をわしゃわしゃと掻き回して、言った。
「また今度。覚悟しといて」
髪のせいで狭くなる視界に写った、これまでにない一松の歯を見せて笑う姿。
その姿に心臓が大きく跳ねた。
一松は下ではしゃぐ兄弟たちの酒飲みに参加しにいった。
俺は一松から与えられた熱が冷めずにしばらく布団の中で深呼吸を繰り返していた。
滅多に見られない一松の満面の笑み。それを見ていたのは俺1人。
俺はあの最高級の笑顔を独占していた。
それがひどく嬉しくて、どうしようもなく一松を愛しいと思ってしまうのだ。
いつか誰にも邪魔されない空間で1日中、一松を独占していたい――。
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