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鬼が出るか蛇が出るか 1
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風が冷たい。
鬼塚、急に来るから。約束した時間に来なかったのに。
俺、ずっと待ってたのに。
随分簡単に連れ出せるんだな。なんか一言ないの。俺に、謝りの一言でも言い訳でもなんでもいいからお前が今ここにいる理由教えて。
「乗れ。」
ヘルメットを渡される。鬼塚は無言でバイクにまたがると、「早くしろ」と俺を急かす。仕方なくヘルメットを被り、後ろのスペースにまたがった。
「捕まっとけ。」
恐る恐る腰に腕を回すと、手の上に鬼塚の手が重なって、ぎゅうっと俺の拳を握った。
「落ちんなよ、まき」
不意に名前を呼ばれ、どくんと胸が脈打つ。
そう、この感じ。
暖かくて、俺が少しでも隙を見せたらどんどん入り込んできて、感情の全てを埋め尽くす。だから絶対、隙なんて見せちゃダメなんだ。しっかりしろ俺。信じたら負け。感情を殺せ。
大きい背中に触れると伝わる体温に目を瞑って耐えているうち、バイクが止まって鬼塚の「降りろ」と言う声が聞こえた。
着いたのはうちの家の、マンションの駐輪場。
今日はもう帰りたくないと思ってたのに。また無理矢理ここに連れてくるんだな。
ほんと、俺の気持ちなんて何も考えてない。
しぶしぶバイクから降りると、俺の動きが遅いのにいらだったのか強引にヘルメットを剥がされる。
少し怖くなって、ビクついてしまう。
やだ、もう早く帰りたい。怖い。
てか何されるんだろうか俺。なんかまずいことしたっけ?だってこんな、不機嫌な鬼塚見たことない。
だめ、俺死んじゃうかも。
今すぐここから逃げたいって俺の思いとは裏腹に、手首をがっしりと掴んで離さない大きな手。
家に帰ったら何されるんだろう。怒鳴られるのかな⋯それとも殴られる⋯?なんで?俺がサンタの家に行ったから?
わざわざ迎えに行かせて、面倒だって思われたのかな⋯
ぐいっと引っばられる腕によろめく身体。掴まれた右手首が熱くて痛くて泣きそうになる。
合わない歩調に、歩幅が足りない俺は鬼塚についていけなくてつい小走りになる。
エレベーターが来て中に入っても、少しも手を緩めたりしてくれなかった。
扉が開いたと同時にまた引っ張られる。もうちょっとで家に着く。着いたら何されるかわかんない。
さき先歩いていく背中を見ては、心臓が痛くなって、一度も振り向かないのにまた不安になって怖くなって。
「お⋯っ、にづか、痛い⋯」
俺の声には見向きもしないで、着いた先の扉に手をかける。
そしてまるで放り投げられるみたいにして、俺の体は玄関に倒れ込む。
ひゅうっと気道が狭くなるのがわかる。
電気もつけないで、真っ暗の中こんな冷たいフローリングに叩きつけられて、不機嫌な同居人に俺はここで殺されるのか。
怖い。
なにも言わないで、鬼塚が俺に覆いかぶさる。
「⋯⋯やっ、やだ、来んな⋯っ!」
必死に押し退けようとしたけど、俺の力じゃ非力すぎてどうすることも出来ない。
怖いのに、痛いのに、なんでどいてくれないの。
抵抗してた腕がいとも簡単に捕えられ、冷たい床に押し付けられた。
怖くて息ができない。
どうしよう、涙が、
「やだ⋯っ、離して鬼塚っ、痛い⋯ッ」
涙が溢れて、
どうしようも出来なくて
叫びたいのに声が出ない。
「⋯賛田に何されたか言え。」
殺意が混じった視線が胸に刺さる。喉の奥から声を絞り出して、ゆっくり、思い出しながら答える。
「⋯さっ、さんたは⋯⋯っ、雨の中寒くて死にそうだった俺を⋯家によんでくれて⋯っ、」
ギリギリと手首が締め付けられる。
「お風呂、入って⋯ごはん一緒に食べて、そんで⋯っ」
「⋯⋯そんで、寝たのか。」
「⋯へ、」
「賛田と、ヤったのか?」
「え、」
「コレ。賛田が送ってきた。」
鬼塚のスマホに写ってたのは、俺とサンタが並んで寝てる写真。
何故か、2人とも半裸で。
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