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「なに、それ⋯」
なんだっけ。
俺サンタと何してたんだっけ?テレビ見ながらアイス食べたのは覚えてる。でもそっからあんまり記憶が無い。
この写真だって、普通に並んで寝てるんじゃないの⋯?半裸だけど。
「おっ、覚えてない⋯」
ビクビクしながら言うと、鬼塚は舌打ちして俺を睨んだ。
「覚えてねぇだと⋯?」
「ん⋯っ」
コクコクと首を上下に振る。
鬼塚は呆れたようにため息をついた後、俺から手を離し、起き上がって俺の着てた大きめのコートを掴みはだけさせた。
「⋯こんな痕付けられて、なにも覚えてねぇのかよ。」
「痕⋯?」
コートの下は裸で、冷たい空気が上半身に触れる。
鬼塚の突き刺すような視線が怖くてたまらなくて、起き上がって逃げようとしたけど鬼塚はコートを掴んだまま。
「なぁ⋯っ、おにづか⋯」
あぁ、こわい。
声が震える。
「手、はなして⋯寒い、から、」
ぱっと手が離れたと同時に、何も言わず鬼塚は立ち上がり自室に入っていった。
俺は鳴り止まない心臓を押さえて、玄関の電気をつける。
立ち上がるも足はふらつくし、手首がヒリヒリと痛い。馬鹿力め。
コートを脱いでハンガーに掛け、自分の部屋へ服を取りに行こうと思ったとき、頭が何かで覆われて真っ暗になった。
「⋯これ着とけ。」
視界が明るくなると、服を着せてくれたらしい鬼塚が目の前に立っている。
別に自分の着るからいいのに。
ふわっと香る柔軟剤のにおい。不安が和らぐ優しい香りに、また泣きそうになる。
「なんで、」
「お前が寒いっつったんだろ。」
そういうことじゃなくて。
中途半端な優しさが、俺の判断力を鈍くさせる。
「⋯⋯勝手だな」
「は?」
「⋯⋯いっ、いつもいつも、お前のしたい事ばっか⋯俺に押し付けて⋯!」
こっちの気持ちなんて、一度も考えたことないんだろうな。だからこんな、自分勝手なことばっか出来るんだ。
わかんないんだよ。自分のやりたいことやって他人の気持ち踏みにじったりできるのが。
なのに俺は、いつもお前に振り回されて
気がついたらお前のことばっかり考えてる。
「俺は!!別にあのままサンタの家に居てもよかったんだ!!!居てもいいって言ってくれた!!!
なのにっお前が来て無理やりまたここに連れてきたんだ!!!俺の⋯っ、俺の気持ちなんて考えもしないで⋯っ!!」
もう少しで、俺の居場所が出来たかもしれないのに。
わざわざこんな冷たい所に無理やり連れてこなくてもいいじゃないか。
「サンタがいなきゃ俺は公園で凍え死んでた⋯っ、お前が約束の時間になっても来なかったから⋯⋯っ!」
話し出すと、じわじわとその時の感情を思い出してしまって、
苦しくて縮こまった心臓を押さえながら、精一杯の声を出した。
「お前は⋯っ、お前はなにしてた!!?俺が雨の中待ってる間、
どこでっ、何を⋯⋯、」
寂しかった。
ひたすら寂しかったんだ。
来るわけないって諦めようとしても、もうすぐ来る、もう少しで来るって心のどこかで期待してた。
サンタの家で風呂はいってた時も、オムライス食べた時も、テレビ見てた時もずっとずっと鬼塚のこと考えてた。
今思えばあの約束も、あの場から邪魔な俺を遠ざけるための口実だったんじゃないかな。
⋯そうだよな。
馬鹿だな俺。
「⋯ひっ、⋯⋯ぅ、」
「泣い⋯てんのか」
「⋯なっ、いてな⋯⋯っ」
苦しい。
心が裂けそうだ。
必死に目を覆っても、抑えきれずに涙が溢れていく。
孤独には耐えてきたつもりだったのに。こいつのそばにいると、自覚させられるんだ。
俺の居場所はない。
わかってる。
わかってるよ。
「まき、」
「⋯ひ⋯っく、」
だから止んで。
お願いだから止まってくれ。
「あぁっ⋯⋯うぅ⋯っ!」
「おい、まき⋯」
鬼塚の手が、髪の毛に触れた。
「泣くな、」
「やっ⋯!!さわ、んな⋯っ!」
体を突き飛ばして、鬼塚がいるこの場から逃げようと洗面所に向かって走った。
鍵を閉めて、閉じこもって、気持ちがおさまるまで一人で居たかったのに
扉を閉めようとしたら、隙間から腕が伸びてきて
俺の肩を掴もうとする。
「やだ⋯っ、あっち行けよ!くそ⋯っ、」
全力で手をはらいのけ、精一杯の言葉を放つ。
「お前なんて、大っ嫌いだ⋯っ!!!」
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