アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2
-
「⋯んだそれ」
え、
今、声が
「えっ、うそ」
寝てると思ってた、のに。
ぼんやり暗い中、 ベットの軋む音がすぐそこで鳴ってる。
「わっ!?ちょっ、」
肩辺りを鷲掴みされたと思ったら身体が宙に浮いて、まるで寝技でもかけられたかのように視界が大きく歪んだ。
俺は、床に叩きつけられた割には背中が痛くないことと、真上から鬼塚が恐ろしい形相で睨んでいることから、床ではなくベッドの上にいることに気付いた。
上にいる、というか引きずり込まれれたというか⋯この状況、はたから見たら狼がウサギを捕食するシーンそのまんまだろうな。
つーか、やばい。
手首がっちり固定されて、起き上がれない。
ベッドに残った体温と鬼塚のにおいに包まれて、しかもこんな至近距離で覆い被さるように。
鋭い眼光を向けられ、ドクンと波打つ心臓。
「⋯⋯お、鬼塚⋯?」
「⋯るせ⋯」
鬼塚、酔ってるのかいつもより少し手が熱い。
「⋯お前、さっきなんつった?」
「え、」
やば、寝てると思ってたから⋯まさか聞かれているとは。
「すっ、好きな、ひと⋯⋯いるって、」
こんなの言ったところで振り向いてくれるはずないって、知ってる。
知ってるけど、こんなことしか思いつかなくて、ほんと頭悪いなって自分でも思う。
けどさ、本当のこと正直に言ったら気持ち悪いって思うじゃん。
軽蔑されたら、嫌われたらってどんどん悪い方に考えちゃって、いつも自分からなにも出来ないでいる。
一歩でも進もうと、気を引こうとしたらこれだ。進んでるどころか遠のいていってる。
「⋯⋯うっ、うそだよ!嘘!冗談言っただけ!ね?」
あーわざとらしい。
でもほんとのこと言えないから仕方ないじゃん。
言ったら絶対鬼塚俺のこと気持ち悪いって思うよ。それだけはやだなぁ⋯
「だから、ね?ほんと冗談だから。そんな怒らないで⋯」
なんだよ嘘って。
俺って、まじでくだらない奴。
そんなことでいちいち話しかけんな、って思ってんだろな。
「手ぇ、離して⋯⋯痛いから」
「⋯⋯。」
⋯やば、声震える。
俺の声ちゃんと聞こえてんのかな。
なんて思われてるかわかんないのってこんなに怖かったっけ。
胸が痛い。目の奥が熱い。
もうやだ。なんでこんなこと⋯
「おっ、鬼塚いちいち力強いんだよ⋯っ!!折れたらどうしてくれん⋯⋯
⋯⋯の、」
⋯なんで
鬼塚がそんな顔するの。
「まき」
ギシ、と軋むベッド。
ふっと視界が暗くなる。
鬼塚の顔が近くなって、ビックリして目を瞑った。
「目ェ開けろ。俺のこと見とけ」
「⋯むっ、むり⋯っ!」
「呼べ。」
「え⋯?」
「⋯呼べよ。俺の名前」
悲しいような、苦しいような声で
一体どんな顔で、どんな気持ちで鬼塚は俺にそんなことを言うんだろうか。
「⋯⋯おっ、鬼塚⋯?」
今、どんな顔してるのかな。
恐る恐る目を開けようとしたその時、
「⋯⋯っ、ん」
ほんの一瞬、
あたたかいものが唇に触れた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
137 / 219