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え、
いま何された⋯?
「おっ⋯に、」
⋯⋯くち、
くち、あたった、
「⋯はっ。顔真っ赤。」
「なん、で」
⋯何で。
俺に、
「⋯⋯なんで⋯ッ、こん、な」
酷い。
最低なヤツだ。
最悪で最低で、尋常じゃないくらいドキドキしてる。
アルコールの香り、それから、甘い香水のにおい。
酔ってるからって、俺を女の人と間違えるなよ。
「⋯⋯ぅ、」
泣くな。
くそ、顔が隠せない。
ちくしょう。両手なんか掴みやがって。
あぁ、もう、
俺はお前のオモチャじゃないって。反応見て楽しむだけ楽しんでこっちの気持ちなんか考えもしないで、女の人の匂いさせて酔った勢いで、こんな、
⋯⋯こんな、こと、
試すようなことするなよ。
「や⋯っ、離せ、ばか⋯っ!おれはっ、お前なんか⋯⋯ッ、」
好き
だから早く離して。
離してくれないと、壊れる。
こころも、からだも、ズタズタにされて立ち直れなくなって、お前が俺を好きかもなんて一瞬でも期待したことを死ぬまで後悔するんだ。
唇が触れたって、名前を呼ばれたって、期待しちゃいけないんだよ。
さんざん学習してきただろ。
「⋯言えよ」
「な、に⋯っ、」
「好きな奴」
「だからっ、冗談だって⋯」
つーか、お前になんの関係があんの。俺が誰を好きになろうとどうでもいいくせに。
「いい加減⋯っ、離せってば⋯!!」
くそ、くそっ、好きでもないやつにキスなんてすんなよ。俺がどんだけ嫌って言っても、無理やり力で押さえ込んで、俺が隠してたもの全部引っ張り出してくる。
そんなことされたら、いつか必ず。
言葉になる。
声に出てしまう。
「⋯ッ、鬼塚、まだ酔ってんだよ⋯⋯だから、俺にこんな⋯」
「⋯⋯」
「ね、机の上に水⋯置いて、ある、から⋯⋯それ飲んで酔い覚まして⋯」
声が震える。
涙が混ざった、小さな声。
とても平常を装えたとは言い難い。
鬼塚の手が離れて、自由になった両腕を使ってやっと起き上がることが出来た。
手首はまだ痺れが残っていて、うまく力が入らない。
ベッドの上に座り直した鬼塚は俺に背を向けて、水を飲むでもなくただ具合悪そうに額を片手で覆ってた。
「⋯⋯お前は、」
「えっ?」
「お前は⋯⋯ん、で」
言葉を詰まらせながら、苦しそうに喋る。
「⋯?なに、聞こえな⋯」
耳を向けて近寄ると、ぐいっと頭だけ引き寄せられた。
「おに⋯っ、」
「もっかい。」
「んっ⋯!」
息する間もなく、唇が重なる。
ずくん、と、心臓に矢が刺さる。
「ん⋯⋯っ、ふ、ぁ」
あつくて、とろけそうで、全身が乗っ取られる感じ。
やば、あたまふわふわしてきた。
視界もぼやけて、力入らない。
「んっ、んン⋯ッ!!」
おにづか、鬼塚、
だめだ俺、もう泣きそう。
「っは、はぁ⋯っ、はぁ⋯っ!」
身体が離れて、俺は手の甲で必死に顔を隠した。
心臓がまだドクドクいってて、顔の熱くなった体温がぽたぽたと涙になって零れた。拭いても拭いても抑える間もなく溢れて、ベッドのシーツにシミを作ってく。
「⋯⋯だからっ、なんで⋯ッ」
つらい。
息が苦しい。
お前ってほんと最悪なやつだ。
お前にとってはたかがキスかもしれないけど、俺にとっては大事なことなんだ。遊び半分でやるんじゃねぇよ。
俺はお前が好きで、
好きで好きでどうしようもなくて、
嫌われたくなくてそばに居たくて必死で、
知られたら嫌われるって思ったからここまで隠してきたのに。
「⋯⋯さいっっていだ、お前、こんなの⋯っ、」
なぁ、もう勘違いで終わらせてくれよ。
つらいんだよ。
死にそうなんだ。
好きで好きで、死にそうだ。
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