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「とりあえずサンタ、換気したいんだけど上の窓に手届く?」
「多分。」
予想どおり、俺が背伸びしても届かなかった窓に楽々と手が届く。頼んだ分際でアレなんだけどこの身長差には少々苛立ちを覚えるな。
「うぅっ寒い」
「そりゃ窓開けたらなぁ。そこら辺のダンボール解体して被れば?」
「うっわめちゃくちゃホームレスっぽいじゃん⋯」
待ってましたと言わんばかりにサンタが俺の方を向き笑顔で首をかしげる。
「しゃあないなぁ。じゃあ俺とくっつくー?」
「お前俺が断るのわかってて言ってるだろ」
完全下校の時間は18時。外が暗くなってきてるからもう過ぎてるだろうし、となると朝までサンタと一緒コース⋯
「俺は全然ええんやけとなぁ。」
「良くない!こんな暗くて寒いとこで一晩とかありえないし朝まで飲まず食わずとか耐えられないなんとかしてサンタさん」
「こういう時だけ希望持った呼び方するんやめなさい」
サンタはマットの上で俺に背を向けて腕を枕に寝転がった。俺は山積みのダンボールを解体し布団として暖を取る作戦。この時点で諦めモードである。
この小屋、電球はあるもののスイッチを押しても一向に光る気配はなく、きっと長年使ってなさすぎて電気が支給されてないか電気が切れたものと思われる。
夜、頼りになるのは窓から差し込む月の光だけということ。絶望。
ダンボールを5箱ほど解体し終わり、ふと隣を見た。
「サンタ⋯?寝たの?」
「⋯⋯。」
えっ嘘だろこの状況で即寝とか肝が据わってやがる⋯とんでもねぇなこの男。
「⋯サンタ?」
恐る恐る顔をのぞき込む。確かに瞼は閉じてる。この寒さの中寝たら風邪をひいてしまうので、俺は手に持っていた一枚になったダンボールをそっとサンタに被せた。
これでなんとか風は防げるだろ。
俺もそろそろ寝ないと、昨日全く寝ていないので眠過ぎて頭おかしくなりそうだ。
背を向けるサンタの横に、2人分ほどのスペースをあけて横になった。
あぁ、今なら秒で寝れる自信ある。
「寝るん?」
「うわ、起きてたの⋯?」
びびった⋯なんだ急に寝たんじゃなかったのか。
「眠い?」
「うん⋯きのういろいろあったから⋯」
サンタの声はいつもより落ち着いていて、そのせいか俺もリラックスして気を許してしまいそうになる。変なことを口走りそう。
言ってはいけないようなこと。
「いろいろ?」
優しい声。
「うん⋯」
心が落ち着く。だんだん意識が遠くなる。
「⋯りゅーくんとなんかあった?」
「う⋯ん⋯」
ほんとは誰にもいえないけど。今なら受け入れてくれる気がした。
静かに、ただ聞いてくれると思った。
「きのう⋯おにづかにキスされて⋯」
夜寝れなかった。
「わすれようとおもった⋯けど⋯わすれたくなくて」
どきどき心臓が鳴りっぱなしで、なんでかわからないけどどこか心の奥が傷ついている。
今まで味わったことのない複雑な感情だった。
びっくりして、どうしたらいいのかわからなくて、
だから、涙がでた。
「さんたは⋯本気で人をすきになったこと、ある⋯?」
「⋯⋯。」
ダンボールが雪崩落ちる音と、体を起こす音が聞こえた。
俺の話、くだらなすぎたかな。
「⋯今日、それ確かめるために来てん。」
「⋯⋯?なに、それ」
「扉、開かんようにしたんはわざと。」
「⋯?」
「俺さ、ほんまに恋愛とかどうでも良くてただ女の子大好きで大切にしようとかそんなん全く思ったこともなかってん。自分も大好きやし他人のことは無関心で、この先変わるつもりもなかってんけど⋯」
「⋯うん」
うっすら目を開けると、あぐらをかき、背中を丸めているサンタがいた。
さっきと様子が違っていて、俺もゆっくり体を起こし話を聞く体制に入った。
「好きとか本気になるとか、自分に向けられたら鬱陶しいしキモいしもうええわってなんねんけど」
「⋯?」
「けどこんなにイライラすんねんやったら多分、本気で嫉妬してんちゃうかな⋯」
俺に、聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟く。
なにか声をかけれたらいいんだろうけど、俺なんかが口を挟んでいい話題じゃなかったのかも。
目の前で、色素の薄い髪が揺れる。
さらさらとなびく髪を、無性に触れてみたくなるのはなんでだろう。
サンタが今どんな顔をしているのか、垂れた前髪を少し指で解き、姿勢を低くして覗いてみた。
いつものヘラヘラした笑顔が消えて、どこを見ているのか分からないような目でずっと口を閉ざしている。
俺は何か、触っちゃいけないものに触れてしまった気がして、驚いて声が出なかった。
どうしたらいいかと手を退けようとした瞬間、サンタと視線が交わった。
前髪の向こうで、真っ直ぐ、突き刺すような眼で俺を見る。
怒ってるのかなって思うほど、サンタはその熱い視線を逸らそうとはしなかった。
「こういうことすんなや」
「え⋯?」
「触んな。」
前髪に触れた俺の手をはらい、顔を上げた。
「あっ、ご、ごめ⋯」
ズキリと胸が痛む。なんだか、今すごく嫌な顔をされた。
他人に触られるの、というか、俺に触られるのそんなにやだったのか。
あれ、俺こんなに嫌われてんの⋯?
「さんた⋯っ、ごめん、ほんとに⋯もうしないから」
大きな手が俺めがけてすっと伸びてくる。
怖くて肩が強ばり、声もあげられずただぐっと構えた。
「⋯⋯え?」
俺の、制服のネクタイの結び目を掴み、するするとほどいてゆく手。
かと思えば前に引っ張られ、つられて首も引き寄せられた。
顔を近づけ、低く響く声で言う。
「今から確かめるから」
「⋯なに、」
「本気かどうか。」
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