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「はーーっ。こんくらいでええかな。」
「⋯え?」
「あそこ見てみ。」
あれ、いつものサンタだ。
扉の方を指差し、いつも通りの笑顔で言った。
「俺らずっと見られてたん気づかんかった?」
「は⋯⋯えっ!?」
「多分三人はおると思うけど。この芝居もその子らへのサービスな?」
人差し指を口に当て、俺に向けて笑顔を作った。
頭がついていかない俺はとりあえず体を起こし、閉まって開かなかったはずの扉をサンタが軽々と開けたのを見て唖然とする。
「出えへんの?」
「あ⋯いや、出るけども」
頭上にハテナが浮かぶまま外の砂利に足を下ろすと、扉のすぐ近くに女の子三人が鼻から血を流して倒れているのが見え、思わず驚きの声をあげた。
「サンタっ!!?さんた!!!女の子が倒れてる!!鼻から血が出てる!!」
「ほっとき。」
「何で!?」
「その子らはな⋯そうなることを望んでたんや⋯」
「⋯そ、そうなの?」
「まあ大半は俺のせいやけどな。」
外は暗く、恐らく夜中の11時を過ぎたか過ぎてないかくらいだろう。
この女の子達も早く帰らないと危ないんじゃないか⋯
「送っていく。」
「あぁ。そうだよな⋯いくら望んでこうなったとはいえ女の子だもんな」
「はぁ?俺が言うてんのはまきまきのことやけど?」
「えっ」
「駐輪場で待ってるから教室にカバン取りに行ってき。鍵空いてなかったらドンマイ」
「わっ、わかった」
その後俺は小走りで教室まで行き、扉が空いてなかったため窓から侵入して自分の鞄を取り、急いで駐輪場へと向かった。
「そない走ったらまた発作出るやろ!ゆっくりでええねんゆっくりで!」
「あぁっ、ごめんなさいつい」
「ヘルメット被って。後ろ乗って。」
「わかったっ」
⋯ほらね。優しい。
「何ニヤニヤしとんねん」
「し、してないっ」
「ええからちゃんと掴まっとき」
言われた通り、サンタの腰に手を回す。そして、バイクが走り出す。
「・・・サンタはさ、」
「あー?なんて?」
風の音とヘルメットでお互い声が聞こえない。けど、聞きたいことが山ほどあって、言いたいこともそれなりにあった。
マンションに着くのはあっという間で、ヘルメットを返す際にふと目が合って、なんだか少しおかしくなった。
「サンタってさ、優しいよな。」
「はぁ?」
「なんだかんだ言って俺のこと気遣ってくれたり。男を家まで送るとか普通はしないでしょ」
「・・・・・・。」
マンションを見上げると、うちの電気は消えていてちょっとホッとした。
俺が家に帰らなくても、心配なんてしないだろうけど。
「⋯心配、するとおもうで。」
え、と声が漏れる。
「⋯あれ、俺声に出てた?恥ずかしい⋯」
「いや、顔でわかる。アホみたいな顔しとる。」
「はぁ!?なんだそれ!」
むかっときて、サンタの方を振り返った。
言葉で挑発する割に、優しい笑顔を俺に向けてる。
「⋯もう帰んの?」
「えっ⋯まぁ、すぐ目の前だし」
「そうか⋯⋯せやな。」
一歩、サンタが踏み出す。
視線を合わさず、足元に目を向けまた一歩、一歩と。
俺は何故か動けなくて、動いちゃいけない気がして、
目の前にサンタが来るまで、サンタが俺の背中に腕を回すまで、まるでスローモーションのようにことが流れてくのが見えた。
一つ一つの指で、手で、腕で、俺の背中を包んでく。それがあまりにも急で、なんの前ぶりもなく起こったから思考が停止した。
サンタの鼓動が、俺の耳元で鳴ってる。
行き場のない俺の腕は、どうしようもなく肩からぶら下がってるだけで。
どうしよう、どうしようって、耳元の鼓動が速くなるのを聞いて焦ってなにか言葉をかけようとしたけど出てこなかった。
ふんわり、ぬいぐるみを抱きしめるみたいに優しくするから、少しびっくりした。
「さん⋯」
「⋯また明日。」
「あ、あぁ、また明日⋯」
サンタはゆっくり腕を解き、体が離れたあと俺の前髪をくしゃっとして、背を向けた。
ヘルメットを被りバイクにまたがる姿を、熱くなった体で、俺はただぼーっと眺めてた。
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