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触れてしまった 1
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サンタとさよならして、家に戻ろうと何も考えずにエレベーターに乗る。
そのまま少し経ち、階数ボタンを押してないことに気づく。
自分でも何してんだろって思った。
あれこれ思い出してるうちに察してはいけないものを察してしまった気がする。
家の扉を開け、真っ暗な玄関に入ったところでふと思い返す。
サンタは芝居って言ってたけど、どこからどこまでが芝居なんだろうか。最後のハグは何だったんだろう。外国特有のさよならのハグ、なのかな。
それにしてはあまりにも優しくて、その理由が俺には理解出来なかった。
この前までサンタは俺のこと嫌いなんだと思ってたから、尚更。
小屋の中でのサンタの顔、すごく怖かった。首元の噛まれた痕をさすり、息を呑む。
本気、じゃ、ないよな⋯⋯?
「⋯怖かった⋯」
そっと胸を撫で下ろした。
俺はまだ玄関に突っ立ったまま、靴も抜いでない状態で、緊張とかいろんな感情が今になって湧き上がってきて。
少し、手が震えた。
もう今日は早く寝よう。
靴を脱いで、廊下の電気を付けようとしたその時。
「遅せぇよ」
声がした方を見上げると、暗い中うっすら人影が見えた。
「た⋯っ、ただいま⋯」
「遅せぇ。」
2回言われた⋯まさか家にいるとは思わなかった。
「⋯何してた?」
「がっ、学校でちょっと⋯居残ってて、」
声が震える。ふと視線を逸らす。
「こんな時間まで残れるわけねぇだろ。」
やばい。鬼塚、怒ってる。てかそっちこそ夜中に帰ってくる方が多いくせに。
「まき」
名前を呼ばれ、ビクッと身体が跳ねる。
だめだって、俺今感情の整理が出来てない。心が追いついてなくてもうぐちゃぐちゃなんだ。
だから、会いたくなかった。
「⋯⋯さんたと、一緒にいた」
震える拳を握りしめる。
俺の目には玄関に並んだ靴と、床ぐらいしか映ってなくて、鬼塚の表情が分からなかった。
「べ、勉強教えて貰ってたの⋯⋯ほんと、それだけ。」
なんで嘘つく必要があったんだろ。
やましいことなんてないのに。
今はただこの不安な気持ちを、どうにかして欲しいだけなんだ。
サンタは友達。
優しい友達。
「そうかよ」
呆れたのか、俺が嘘をついたのを見透かしたのか、鬼塚は足音とともに遠ざかる。
俺は、自分の靴を眺めてる。
鬼塚は、俺が嘘をついたのになんのリアクションもなく遠ざかっていく。
それほどに興味がないってことで、そんなことは俺も承知していた。
それなのに。
こんなに悲しいのは、なんでなの。
俺は鬼塚にどうして欲しいの。
顔を上げて、見えたのはおっきな背中。
その瞬間いろんな感情が込み上げてきて、どうしたら伝わるんだろうって、どうしたら振り向いてくれるんだろうって悲しくなって苦しくなって、
あぁ、やっぱり好きだって。
思った。
「⋯⋯お、にづか、」
なぁ、
どうしたら振り向いてくれる?
「⋯キス、したい」
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