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バチっと目が合った。気がする。
目を見開いて、ビックリしたような顔で数秒俺を見返す。
はっと我に帰り、両手で口を覆った。馬鹿みたいに何も考えず口走ってしまった。
けどもう向こうの耳に届いてしまったみたいで、止まった足音にサーっと血の気が引く。
やばい、俺今めちゃくちゃ気持ち悪い事言った。
もしかしてもう取り返しつかないのでは。
鬼塚が近づいてくる足音がする。後ずさりして、後ろの扉の取っ手に手を掛けたけどもう遅かった。
目の前に迫る気配に、身体が硬直する。
後ずさりしようとしても、かかとが扉にぶつかってこれ以上逃げることも出来ず、背中に鉄の扉の冷たさを感じながら鬼塚のリアクションを恐れた。
「んっ⋯!」
頬に鬼塚の手が触れる。
俺の体は咄嗟に身構えた。
「まき、」
ごつごつした太い指で、顎を上に向けられ強制的に目を合わされる。
暗闇に目が慣れ、改めて感じる身長差と、体格の違いに足がすくんで言葉が詰まる。
心拍がだんだん速くなって、顔に熱が集中して、もっと近づきたいのに今すぐここから逃げたい自分もいて。
どうしよ、どうやって誤魔化せばいい?
だめだ、こんなの逃げられない。
じわじわ伝わってくる体温が、呼吸音が、どんどん近くなってく。ドキドキして心臓潰れそう。
「だ、め⋯」
自分から言ったのに。
自分でも訳が分からない。
俺は、鬼塚が普段相手してる女の人じゃない。
今日サンタと話してから、人に好かれるってどんなだろって、思ってしまった。
時々優しいけど嘘ばっかつくサンタに優しく抱きしめられた時、「ああ、きっと、好きになるってこういうことなんだ」と思ってしまった。
抱きしめる時の表情も体温も、全部嘘なんだろうけど、正直びっくりした。
サンタは嘘が上手い。
こういうのって、本当に好きな人にしか出来ない。
今この状況でも、俺は好きな人としかできないことがしたくて、けど、鬼塚は好きじゃない人ともできて。
そういうのって、なんか、だめなんだよ。
嫌なんだ。
キス、したいのにしたくない。俺のパッと出の一言で、何でここまで近付いてこれるの。
期待しちゃうじゃんか。
「だめ⋯」
「何が?」
鬼塚、すごくあったかい。
このままこの空気に流されそうになる。
それを阻止しようと、目の前の体を腕でぐっと押し返す。
「だ、め⋯だって、好きじゃないのに、こんな⋯」
「⋯あ?」
鬼塚の体は、俺が押したところでピクリともしなかった。
それどころか距離が縮まり、とてつもない威圧感に押しつぶされそうになる。
声色も、表情も、不機嫌な時のものになる。
明らかに空気が変わった。
俺なにか気に触ること言ったっけ⋯?
「⋯お前、好きでもねえ奴にキス強請んのかよ。」
「⋯へ、」
え、なんで怒ってるの。
「まって、なにか勘違⋯っ、」
ぎゅうっと、首が締まる。大きな手で胸ぐらを掴んで、俺の体ごと持ち上げる。
「キス、したかったんだろ?してやるよ。」
「なっ、ん⋯ッ!」
強引に押し付けられた唇、引っ張られた服で首が締まって身動きが取れない。苦しい。
息が出来ない。
胸が痛い。
「⋯んっ、ふ、ぁ⋯!」
「⋯口開けろ。」
「⋯っ、は、」
口が離れ、息を吸おうとした途端柔らかいなにかが口内に入り込んできた。くちゅくちゅと舌を絡ませ、口内を犯す。
抵抗しようと鬼塚の胸板に添えた手のひらは、小刻みに震えて力も入らない。
「ん、んぅ⋯!」
腰も膝も、とうとう力が抜けて崩れ落ちた。
玄関の靴の上に尻もちをつくと、体が離れようやく自由に呼吸ができるようになった。
突然の出来事にバクバクと鳴り続ける心臓、足には力が入らなくて頭の中はモヤがかかったようにきちんと働かなくなっていた。
腰を落とした鬼塚は、俺と視線を合わせもう一度襟元を掴み、顔を近づける。
まただ、と思い震える両腕で顔を覆い隠す。
けど、鬼塚からのリアクションがないままで、腕の隙間から顔色を伺った。
「なんだ、これ」
「⋯⋯あ、」
引っ張られてあらわになった首元。
多分、目線の先にはサンタが俺に付けた歯形がくっきり残って見えるだろう。
「誰にやられた」
「えと、これは⋯っ、」
「賛田か?」
まさかすぐに言い当てると思ってなかったから、びっくりして顔に出たんだろう。
俺の表情を読み取った途端鬼塚の形相は豹変し、腰を抜かして立てなくなった俺の体を軽々と持ち上げた。
「⋯えっ!?ちょっ、なにすんだ!!」
質問に答えることなく、鬼塚は俺を抱えたまま自分の部屋の取手に手をかけた。
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