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「⋯おっ、俺もう寝ないと⋯」
ここに居たくない。これ以上傷つきたくない。
ベッドから足を降ろそうとした瞬間、ぐいっと腕を引っ張られた。
「っなに、もう俺部屋に⋯っ」
「駄目だ。」
「⋯は、」
期待するな。さっき突き放されたばっかりじゃんか。
期待するな期待するな期待するな。
「お前、もしかして⋯」
鬼塚がなにか言いかける。何も聞きたくない俺は、下を向いて固くまぶたを閉じた。
その時、
『 プルルルルー、プルルルル』
どこからか電話が鳴っているのに気づき、自分のポケットに手を当てる。着信音は間違いなく俺のスマホのもので、取り出し光る画面を見ると、サンタの文字があった。
それが鬼塚の目にも入ったんだろうか、掴まれた方の腕がより強く握られ、身体が引き寄せられた。
俺からスマホを取り上げた鬼塚は、不機嫌そうに俺を睨み、着信音の原因を遠くへ放り投げる。
「あっ、ちょ、なにすん⋯っ」
取りに行こうと身体を動かすと、視界がぐらついた。
背中を壁に押し付けられ、即座に唇を塞がれる。
噛み付くように、何度も、何度も。
「んッ、ぅ⋯っ!」
ぞくぞくと電流のような衝撃が身体を貫く。唇を重ねる度、身体が、だんだんとろけてゆく。
なんとも思ってないって、言ったのに。なんでこんなこと出来るの。
「ん、は⋯っ、だめ、んんッ」
ちゅ、ちゅく、と卑猥な音を立てながら、もう一回、もう一回と唇を落とす。
手も指も、全身にまるで力がはいらない。それどころか唇が触れる度、腰あたりにずくん、と衝撃が走る。
だめだ、あたま働かない。振りほどけない。
これ以上触れたら、我慢してきたものが壊れてしまう。
「⋯ッ、んっ、ふぁ⋯っ、」
苦しい。
けど、鬼塚は俺のことなんて好きじゃない。
勘違い、するな。
「んっ、んん⋯っ!!」
どうしたって、俺は鬼塚が好きで、そこだけは自分を誤魔化せなくて。
こんなに好きでも希望なんか微塵もない。なのにこいつは、いつも期待させてくる。
何よりも誰よりも、その口で、好きだって言って欲しい。
「⋯ッは、まき、こっち向け」
「や、やだ、んッ⋯!」
顔を逸らしても、無理やり唇を重ねてくる。
だけど、好きなのは俺だけ。苦しいのも、俺だけ。
「ん、ぅう⋯っ、」
ぽろぽろと、我慢していたものが溢れだしてく。
目頭が熱くなり、視界がぼやけて見えなくなった。
唇が離れ、顔を手で覆っても、溢れ出るだけで止まらなかった。
見られたくない、こんなの、好きって気持ちまるだしじゃんか。
「やっ、やだって⋯ッ、言ったのにっ、」
「⋯まき、おい」
無意識に震える肩を、温かい手が覆う。
「っ、さわ、んな」
涙が止まらない。ずきずきと、触れられる度心臓に鋭い矢が刺さる。
どれだけ顔を拭っても、シーツにできたシミはどんどん広がっていく。
「⋯なんで、泣くんだよ」
ふわり、頭を撫でる手。
「おい、」
止まらなくなる。
うっかり口が滑りそうになる。
「もう、や⋯っ、好きでもないのに、そういうことすんな⋯っ」
「⋯は、」
「勘違い⋯っ、しそうになる、から、」
「まき、」
鬼塚の手が、背中に添って、俺はいつの間にか腕の中にいて。
俺を抱きしめようとする手はいつになく優しくて、それさえも嘘なのかと思うと胸が痛くて張り裂けそうだった。
抵抗したいのに。
「は、なせ⋯っ、」
ちくしょう。
されるがままだ。
風の入る隙間もないほど密着して、背中に当てられた手からは優しさが溢れていて。
落ち着きたいのに、小刻みにしゃくりあげる肩。ひく、と俺が喉の奥から声を漏らす度、抱きしめる力は強くなっていく。
そうやって、優しくするから。
今になってもまだ「好き」だと言って欲しい自分がいる。
鬼塚のすることは、全部嘘。
キスも、名前を呼ぶのも、抱きしめるのだって一切気持ちなんかこもってない。
そう、心から思えたら楽なのに。
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