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昨晩の記憶がない。
俺が今寝転んでいるのは間違いなく鬼塚のベッドで、部屋行ったら無理矢理引きずり込まれてキスされて押し倒されたところまでは覚えてる。
そのあとの記憶が無い。
鬼塚も居ない。
シーツを探っても、ベッドには少しの体温も残っていなかった。
ゆっくり体を起こす。
昨晩来てたはずの制服のシャツは消えていて、何故か裸のまま寝ていた。
訂正、ズボンは履いていた。
そっとフローリングに片足を降ろす。冷たすぎて体が跳ね返りそうなほど、部屋は冷え切っていた。
部屋を出て、服着ることなんか後回しで家の中を見て回った。
本当に、昨日ここに鬼塚が居たか自分でも疑ってしまう程に、なんの形跡もなくて。
使ったあとの食器や、着替えた服、音も匂いも何も無かった。
もちろん、靴も。
生活感のない、乾いたリビングを見渡す。
1人になった途端訪れるこの気持ちはなんだ。
苦しくて声も出せないのに、叫びたくなるような虚しさ。
昨日のあれは夢だったんじゃないかって、思った。
何度も何度もキスされたのは、俺の幻覚だったのかな。
帰ってきて、俺が勝手に鬼塚の部屋に入って鬼塚のベッドで寝ただけかもしれない。
肺も心臓も3分の1くらいにきゅうっと縮こまってく。
苦しい。
痛い。
この家に居てからずっとそうだ。
苦しい思いしかしてない。
どれもこれも全部、鬼塚が好きな自分のせいなんだけど。こんなに辛いの今すぐにでもやめたい。
こんな家出てって鬼塚のこと全部忘れられるくらい幸せな出来事に巡り会えたらどんなに楽か。
昨日の出来事が俺の幻覚だったとしたら、「お前のことなんてなんとも思ってねぇよ」なんてセリフも、勘違いしてしまいそうな甘くて優しい声も全て本当はなかったことで、そうだとしたらこんなに安心することは無い。
そうだ。起きてないことにしよう。なにも。
証拠もないし、こんな辛い思いも無駄だ。
開き直って洗面所で顔でも洗おうと、鏡の前に立つ。
そこで見た光景に衝撃を受け、言葉も出ないまま立ちすくんだ。
首元には、サンタに付けられた歯型。
けど、俺の身体にあったのはそれだけじゃない。
見覚えのない、赤く滲んだ痕が、
首から肩、それから胸、背中にまで、痛々しい程の数が散らばっていた。
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