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いてもいなくても 1
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正直、今すぐにでも追い出されるかと思った。
だけど居なくなったのは鬼塚の方で、晩御飯前に家を出たと思ったらそのまま夜まで帰ってこなかった。
最初は、顔も見たくなくなる程俺に愛想をつかしたんだと思った。
朝起きても靴は見当たらず、俺はそのまま学校に行って、だけど帰ってきても鬼塚が家に戻る気配はなかった。
あんなことされて、もう普通に話せないかなって思ったけど、一度夜中にお酒に酔ったまま帰ってきたことがあったから、できるだけ夜遅くまで起きてた。
また倒れる程酔っ払って帰ってきたら介抱できるのは俺だけだから、できるだけ帰りを待っていようと、起きていようと思った。
リビングのソファーに座って、時々そこで寝落ちして、布団も被らず寝るから朝には風邪引いてたりして。
「寝ちゃった」って飛び起きて玄関まで走るけど、相変わらず鬼塚の靴だけないまま。
この家にひとりで、俺はどうすればいい。
学校では平気な顔してないと慎太郎が心配するから、平常心を保って、できる限り鬼塚のことは忘れてしまおうと思った。
だけど授業中も休み時間も下校中だって忘れられなくて、どうしてあんなことしたんだろうとか、なんであの家に俺を置いておくんだろうとかばっかり考えてしまって。
ひとりでいる事が、前より辛くなった。
あの家で、ずっと一緒にいたわけじゃないのに、一体いつまで俺はひとりなんだろうか。
鬼塚が帰ってこないまま、ついに一週間が経った。
じきに、本格的に寒くなる。フローリングの冷たさも、一人だとより強く感じる。
もうすぐ12月で今年は寒波が大きくて長期間らしいから、すぐに風邪ひく俺なんかにとっては一大事だ。
だから、お風呂から上がったら歯を磨いてはやく暖かい布団に入って寝ないとなのに。
なんでいつまでもこうして、リビングのソファーに座って帰ってくるかもわからない人を待ってるんだろう。
クッションを抱いて寝転ぶ。
このまま目を瞑って、目が覚めたら鬼塚が近くに居て、なんて何度思ったことだろうか。
明日には帰ってくるかな。
最後に見たのはなんとも言えない苦しそうな顔で、最初に思い出すのもあの顔だ。
今どこにいるんだろう。あの女の人の家に泊まってるのかな。
それとも、また別の女の人の所にいるか。
今度会った時は、俺はどんな顔してればいいんだろう。
というか、会えるんだろうか。
考えただけで胸が苦しくなる。結局、また今日も寝られないんだ。
朝ソファーから起きあがって、目の下にクマを作ったまま学校へ行く。
朝ごはんも喉を通らなくて、通学鞄もいつもより重く感じた。
こんな顔じゃまた慎太郎に心配させちゃうな。
顔、あんまり見られないようにしないと。
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