アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
5
-
「んんま゛っぎぢゃーーーーーーーん!!!」
登校早々抱きつこうとする慎太郎を華麗にかわし、遅ばせながら教室へ入る。丁度休み時間のタイミングで到着した為、落ち着いて席に着くことが出来た。
「はーー・・・まきちゃん今日休みかと思って死ぬほど寂しかった・・・」
と言いながら、席に着き一安心している俺の肩に後ろから抱きつきため息をこぼす慎太郎。
「それにしてもまきちゃんが遅刻なんて珍しいね。体調でも悪いの?保健室行く?添い寝する?」
「いや別に・・・普通に寝坊しただけ。添い寝はまた今度。」
「えっ添い寝していいの・・・?マジで言ってる・・・?まきちゃんと添い寝・・・?え・・・・・・?」
なんか白目向いてブツブツ言い出したけど放っておこう。
家を出る前、俺は急いで着替えて用意したけど鬼塚はまだソファーでくつろいでた。今日は休むつもりなのかな、と思い「鬼塚も学校行かないと」と声を掛けようと試みたが、眠そうだったのでやめておいた。
家を出る前、玄関で靴を履いた後、立ち止まって振り返る。
思い返せばこうして、普通に学校に向かう朝っていつぶりだろうか。
家には自分の他にもう1人住んでいて、寂しい気持ちも苦しい気持ちも背負わず、この玄関の扉を開ける日がまた来るなんて想像もしなかった。
こういう時、なんて言うんだっけ。
あぁ、そうだ。
「い、行って・・・きます。」
小さな声で言い残して、今朝は家を出た。
こんな日が毎日続けばいいのに。
明日も鬼塚は家に居るんだろうか。
居たらいいな。
「まきちゃん!!」
「わっ、なに」
「なんか俯いたままにこにこしてたよ可愛いかった。何考えてたの?」
「えっ、俺にこにこしてた・・・?」
「うん。可愛すぎて写真撮ったけど気づかなかったね。」
「撮るなよ。頼むから消してくれ。」
「イヤダヨーン」とか何とか言いながら俺に抱きつき頬をスリスリして誤魔化そうとする慎太郎。まぁいいか。
そして、午前の授業が終わり昼休みのチャイムが響き渡った頃事件は起きた。
俺と慎太郎は、お昼ご飯を買いに向かっていた。途中の自販機でいつもは買わない新商品の炭酸ジュースなんかを買ったりして、ごくごく普通に渡り廊下を歩いていた。
「焼きそばパンまだ残ってるかな・・・」
「俺今日コンビニで南国風トルティーヤと脂身増し増し焼肉弁当とモチモチいちご大福買ってきたけど焼きそばパンが無かったら半分こしよっか♡」
「いや俺そんなに入らないし・・・てかどんだけ食うのお前。」
あ、でもいちご大福はちょっと欲しいかな・・・なんて。
「ねぇまきちゃん・・・」
「ん?なに?」
半分こがどうのと言っていた先程のテンションはどこに行ったと言わんばかりの低い声色で、俺の肩を叩く慎太郎。
「これ・・・さっき買った新商品の炭酸、めっちゃ不味い・・・」
「はは!しんたろっ、何その顔!」
苦しそうに舌を出し眉をひそめる慎太郎の顔がおかしくて、つい笑ってしまった。
「イケメンが台無しだな〜。ははは。」
「いけっ・・・そんな、ぐふふふ」
笑いながら歩いていると、壁にぶつかり顔面を強打してしまった。が、よく見るとそれは壁ではなく。
俺の視界には、ぶつかったであろう誰かの胸板だけが映っていた。
「・・・あ?」
最初に声を出したのは慎太郎で、強くぶつかった鼻を擦りながら正面を見上げた俺も「あ、」と声を出してしまった。
「おっはよーんまきまき!顔大丈夫?」
ひょこ、と顔を出すサンタ。
だけど俺がぶつかったのはサンタではなく、その前を歩いていた鬼塚だった。
「お前まきちゃんにぶつかっといて詫びのひとつも無しかよ。」
聞き慣れない低い声で慎太郎が鬼塚に噛み付く。
肝心の鬼塚は、俺から目を離さずに黙ったままその場に立っていた。
「まきちゃんの可愛い顔傷つけたらぶっ殺すぞお前ら。」
「お前ら!?なんで俺も入ってるん!?」
まず、鬼塚が学校に来ていたことに驚く。
今朝とは違う冷ややかな目線から、俺を庇うようにして目の前に立つ慎太郎。
俺は鬼塚の視線から隠れるように慎太郎の後ろに回ったが、何故か視線が逸れることはなく。
「ごめん」と謝ろうにも、前髪の隙間から覗く鋭い目付きが怖くて、声が出なかった。
今朝はもっと、顔も声も柔らかかったのに。
「あ、の・・・おにづか、」
「まきまきーぃ気にせんでええよ!まきまきちぃちゃいから見えへんかっただけ!そらぶつかってまうて。」
ケタケタ笑いながら話す空気の読めない奴、サンタ。
ムッとした俺の表情を見て更に高笑いを決め込む。
「ははっ!そんな顔しても可愛いだけやで!ははは!!」
腹を抱えて笑うサンタの横で、ふい、と俺から視線を逸らす鬼塚。それから何事も無かったかのように歩き出し、サンタと一緒に去っていった。
「まきちゃん・・・?大丈夫?」
心配そうに俺の顔を覗き込む慎太郎。大丈夫だよ、ありがとうと返し俺たちはまた購買へと歩き出した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
194 / 219