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サンタがお茶を汲みに言っているあいだ、高い天井にぶら下がってるお洒落な電気を見ながら自分がどういう状況にあるのか振り返り中。
ここまで来るのにいろんな事がありすぎて時間が短く感じたし、ものすごく疲れました。
時刻は午後10時半。
「まきまきーコーラとお茶どっちがいい?」
「...お茶で。」
何だその間が広すぎる選択肢は。
会話がなくなって気まずい感じにならないだろうかとか心配してたけど、無駄だったようです。
「まきりんてさぁ前もっとちょびちょびしてなかった?」
「ちょびちょびて何」
「ちょびちょび......ちゃうな。ビクビク?俺のこと見たらこーして体の前で手ぇ組んでさぁ...拒否反応?みたいな?」
「へぇ...」
「確かに色白いけど!!外国人みたいて言われるけど!!傷つくわそんなん!!」
「...すんません」
「この外見やと皆からめっちゃ「カッコイイー♡」とか言われるからナンパにも使わせてもらってるけども。」
もうね、ほっといても喋る。口が止まらんわこいつ。
......ところで本当に外国人なのか?
「なぁサンタさん」
「その呼び方可愛いからいいけどなんもプレゼントやらんからな」
「......サンタはどこの国出身?なぜ関西弁?」
「ロシアのクウォーター。クウォーターとか言うてもばりばり関西で生まれたから関西弁。」
「へぇ...」
「カッコイイ?」
「......ま、まぁまぁ。目の色とか綺麗だと思う。」
「やったーぃ!!......あっ!!ちゃうねんこんな話したいんじゃなくて」
「何?」
コロコロ変わる表情が面白い。関西弁が新鮮で、しばらく聞いてると伝染りそうだな。
「今の家はどう?寂しい?」
「......は?」
突然の質問に、空気が止まった。
それから、この男がどこまで知っているのか怖くなった。
「......別に、普通。」
「寂しかったら俺遊びに行ったろかー?」
「...いらない。」
「お母さん帰ってこぉへんねんやったら一人で寂しくないー?」
「お母さんと住んでねぇし寂しくねぇし」
「あれ?んじゃまだあの家住んでんのか。」
こわい。
俺の知らない俺のことを、調子よく淡々と喋る。
他人のことなんてなんとも思ってないから、ここまでズカズカと入ってこれるのか。
「出て行きたくならへん?あの家。だってさぁ、」
膝の上に置いた拳に、ぐっと力が入る。
「人の気も知らずに彼女連れ込んで......あ、彼女ちゃうな。セフレ?」
「......う、ん」
「見る度に相手ちゃうからうらやますぃー」
「......」
「まきまきそういうの気にする?」
「なんで俺がっ」
...しまった。食い気味で返事したから変に思われたかな...
「なんでて......嫌そうな顔してるし?」
「...してない」
「なんやそれぇー。前はもっと素直やったのにぃ」
「してない!!」
もうやだ。
昔の、前の俺の話なんて聞きたくない。
「「前は」って、みんなそれ言うけど俺はそんなの覚えてないし...っ、俺はっ、今の俺しか覚えてない!!」
...なにも覚えてない。
何も聞きたくない何も知りたくない。
「......なんだよ。そんな、そんなに今の俺がヤなのか。そんなに前の俺が良かったのか。」
本当は、同居人の顔も名前も声も、彼女がいるとかどうとかも知りたくなかった。
俺は記憶を失った時点であの家に帰るべきじゃなかったんだ。
自分のもあいつの事も、思い出さないよう遠くに行けばよかった。
こんな、なんの心の準備もせず他人にバラされるくらいなら、一生思い出せないよう、
どこか遠くに。
そうしないと、ほら
一つ思い出してしまった。
「.........もうっ...聞きたく、ない」
俺は、
「......前の、俺の話はしないでくれ。お願いだから」
俺のことが、嫌いだったんだ。
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