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渡されたのは、ただのゴミだと思った。
けど、開いてシワを伸ばすと番号が書かれてあって、しかもその数字に妙に覚えがあるのがまた気持ち悪くて。
「1、2......ぜろ、いち...」
1201。
12月1日なのか1201年なのか、でも気になったのはそこではなくて。
俺は急いでカバンの底に眠るスマホを取り出し、電源を入れ、開かなかった画面にその番号を打ち込んだ。
「......うそ、開いた...」
明るい画面に変わり、ホーム画面にはアプリが2、3個出ているだけ。
通知が39も来てるメール、アルバム、電話帳、壁紙はやたら高画質なてんとう虫。
メールのアプリを開くと、全て慎太郎からだった。
そのほとんどが、「まきちゃん大丈夫!?」だの、「何かあったの!?」だの、心配したり俺の名前呼んだり。きっと事故った後に連絡が取れなくなったせいだろう。
画面をスクロールしたりいろんな所テキトーに押してったら、下書きのところに「鬼塚君」宛のものがどっさり入っていた。
俺が、あの同居人に書いたであろうメール。
こんなやりとりをしていた事が意外だったのに、もっと驚いたのはその内容の方だ。
「......なんだこれ、ほんとに俺が書いた...?」
" いつ帰ってくるの? "
" 晩御飯は? "
" スパゲティとカレーどっちがいい? "
" 嫌いな食べ物はない? "
" 雨、強くなりそうだから気をつけて "
" 帰ってきたの気が付かなかったよ。朝ごはん作れなくてごめんね "
" 晩御飯は? "
" ビーフシチューとグラタン、どっちがいい? "
......いつ帰ってくるかなんて聞いても関係ないだろ。
料理だって、カレーもグラタンも作れないくせに。
あいつが雨に濡れても雷に打たれても、腹空かして死んでも俺はなんとも思わない。
濡れるなら勝手に濡れてろ。
腹減ったならどこかで食ってくればいいだろ。
...嫌い。
大っ嫌い。
" 早く帰ってきて "
" 好きだよ "
書いたものは全て消した。
残念ながらあいつからの返信は一つもなかったし。
そりゃそうなんだけどね。だって、全部未送信のものだったし。俺には送る勇気なんてなかったんだろう。
最後のものなんか特に、思ってもないこと書いたんだろう。
俺があんなの好きなわけないだろ。バカバカしい。
アルバムに入ってた写真も電話帳の宛先も全て消した。
どこを見ても、俺の思い出の中にはあの気に食わない顔しか出てこなくて
なぜだろう、
1枚、また1枚と写真を消す度に胸が痛んだ。
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