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" りゅーくんの誕生日やねん。"
......だから、何だってんだ。偶然かもしれないだろ。
" まきまき単純すぎひん? "
「......。」
だめだめ。あんなぱっと出の言葉、深読みすんな。俺。
だけど、サンタはどこまで知ってるんだろうか。
メールの内容、あんなの見られたらおちょくられるに違いない。
それに、何より..
「......お、お腹、痛くなってきた。...保健室行ってくる。」
「え、あ、うん!気をつけてまきちゃん。」
慎太郎に殴られて倒れたサンタをまたいで、教室を出た。
逃げるみたいでかっこ悪いけど気分が悪くて、あと、変な動機がする。
「...けほっ、けほ......ッ」
乾いた咳が止まらなくて、焦るように駆け足で保健室に向かう。
チャイムが鳴ったんだろうか、廊下には誰もいなくて。
痛むみぞおち辺りを摩りながら、やっとの思いで着いた保健室は鍵がかかっていた。
「...けほ、けほ...ッ!!......おぇっ、」
気道からひゅうひゅうと変な音がする。
左右を見渡しても暗くて冷たい廊下があるだけで、寂しさのせいか目頭がじーんと熱くなった。
" りゅーくんの誕生日 "
...って言葉が、ずっと頭の中をグルグル回ってる。
きっと深い意味は無いんだから、気にしなければいいのに。こんなに動揺してたら正しくサンタの思うツボだ。
「......ゲホッ、け、ほッ..」
一体、何が俺をこんなに不安にさせるんだろう。
多分、多分だけど、俺にはこういう時会いに来て欲しい誰かがいて......いた、気がするんだ。
思い出せないけど、悲しいとか寂しいとか苦しいとか、当時のそんな感情だけが残ってる。
サンタが「りゅーくん」なんて言うから、何を思い出そうとしてもあの憎たらしいメッシュ頭しか思い浮かんでこない。
...あんな奴じゃなくて、
俺が会いたかったのは、
手を握って、名前を呼んで、抱き締めて欲しかったのは
誰、だったっけ...?
「......扉、開けてやろうか?」
「......は、」
「入りてぇんだろ?中。」
背後から、聞き覚えのある低い声。
扉を開けるために伸びた手は、先生しか持ってないはずの鍵が。
ストラップのついた鍵の輪っかを指に通し、くるくると回しながら問いかけた。
「入んねぇの?」
「は、いる......」
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