アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
5
-
背中に熱がこもる。
ようやく部屋に着き、靴を脱がせて体を降ろす。
まきは、息を荒らげながら壁にもたれかかってギリギリ座っていた。
目は開いてない。苦しそうに眉を寄せてるだけ。
濡れた髪の毛と服が体を冷やしてるんだろう。体が震えてる。
「服脱がすぞ。そのままじゃ寒いだろ」
「...んっ......ぅ、」
「...それと、タオル持ってくるから待ってろ。すぐ戻ってくる。」
俺も着替えねぇと。
本当なら風呂に入りたいところだが、置いていったら死にそうな奴がいるからな。
「頭上げろ。ほら、」
「んん......」
びしょ濡れの頭をタオルで拭いて、ドライヤーで乾かして。座ってるのもやっとなほど辛いのは目に見えて伝わってくる。
顔が赤く火照ってるのが妙に色っぽく感じるのは気のせいか。
少し髪をといて、頬を撫でた。
「ん......ぅ、うぅ」
...さっきより熱が上がってるな。早くベッドに寝かせるか。
「...てん、ちょ.....」
「俺は店長じゃ...」
もう喋る体力も残ってないだろ。
なのに、俺の服を掴んでまた呼ぶ。
何を言っても弱さを見せなかったアイツが、
「......てんちょう...っ、」
俺じゃない誰かにこんな、
泣きそうな顔を向ける。
「...おれ、...てんちょうのそばに.....いたい、です......っ、
お願い、しま...ッ...」
だから、俺は店長じゃねぇって。
バカだろお前。
「...おねがい...っ、しま.....」
「.....行かせるわけねぇだろ。」
小さくなった体を抱き寄せたら、すすり泣く声が聞こえた。
記憶を失う前も後も、本音を隠して笑って強がってたのに。
俺じゃない誰かに身体を寄せて、告白をして、その上そばにいたいとか。
こいつは今、俺の腕の中にいる。
体温も、小さい呼吸の音も、ちゃんと聞こえる。
だけど多分、目の前にいるのが俺だとわかったら。
こいつは一目散に逃げるか、それとも俺を否定するか、どっちかだろう。
……俺が抱き締めても無駄なのか。
そばにいてほしい相手はその" 店長 "って奴で、こんなふうに弱みを見せられることだって出来んだ。
よっぽど好きなんだろう。
…そうか。
そうだな。
「……ベッド、行くぞ。」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
98 / 219