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無理しないで
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彼の涙が止まった後。
龍さんが幸彦さんを自分の部屋に連れていき、
部屋は僕と虎徹さんだけになった。
ソファーに寄り添うように座る。
「情けないとこ見せてごめん、愛生。」
「ううん。虎徹さんもう大丈夫?」
「あぁ、もう元気だ!」
白い歯を見せ彼がニッと笑う。
一瞬本当の笑顔に見えた。
けど、それが偽物だって僕にはわかった。
横にいる彼にそっと手を伸ばす。
さっきまで流れていた涙の跡をそっとなぞる。
「僕の前では無理しないで。辛いなら笑わなくていいんだよ。」
僕の声で彼の笑顔が崩れていく。
作り笑いから悲しい顔へ。
嘘の顔から本当の顔へ。
「ごめん、愛生。ホントは悲しいんだ。胸が張り裂けそうなぐらい。昔あったことも。さっきのことも。」
「…うん。」
止まったと思った涙がまた溢れ出す。
昔何があったか気になるけど、今は聞かない。
虎徹さんならいつかきっと話してくれるから。
それにこういう時は何も言わずにそばにいるだけでいいんだ。
きっと、それが一番落ち着くから。
「…虎徹さん。」
いつもは僕を抱きしめてくれる彼を
今日は僕が抱きしめる。
彼の温もりが消えてしまわないように
優しく強く、彼を想って。
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