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いつものように慧悟さんと図書館でデートをしていたときのこと。
お気に入りのソファにくっついて座り、前からお願いしていた慧悟さんの中学時代の写真を見せてもらった。
中学生の慧悟さんは、ボクの中学と同じで学ランを着ていた。
寝ぐせついた髪とほんわりした笑顔は微笑ましい。
その頃と何も変わっていないのがうれしい。
どうしよう。中学生の慧悟さんが、可愛くて仕方ない。
いまさら一目惚れというのもおかしいけれど、中学生の慧悟さんを一目で好きになってしまった。
これって、いまの彼に対する裏切りになるんだろうか?
写真に見惚れていると、慧悟さんが覗き込んでくる。
「中学の俺、可愛いだろ。惚れ直したか?」
「自分で言う?」
可愛くない言い方になるのは、照れくさいからだ。
「照れるなよ」
肘で小突かれて、思いっきりむかつく。
負けず嫌いなボクの性格に、火がついた。
「そうだね。中学生の慧悟さんのほうが好きかも……」
「ひどっ、この浮気者!」
「浮気って、……自分に嫉妬するの?」
呆れた顔をすると、
「あっ! そうだよ、どっちも俺だ」
もっと意地悪をしてやりたかったのに、芝居じみたセリフがおかしくてつい笑ってしまった。
「なんで笑うんだよ」
拗ねたような口調が、ボクに止めを刺す。
また肘で小突かれたけど、笑いを堪えるに必死で、今度はまったく気にならなかった。
結局、ボクが笑い止むまで何度も小突かれる羽目になる。
「ところで、どっちの俺が好き?」
改めて質問される。
「うーん……」
どっちも好きに決まっている。
だけど、わざと悩んでいるふりをした。
「そこ、考えるところか?」
しばらく考えるふりをしてから、「中学生の慧悟さんかな」と答えた。
「大人の慧悟さんはイケてないか?」
慧悟さんは大げさに肩を落とす。
「いまの慧悟さんも、一応好きだよ」
「何だよ、その言い方。やっぱ、拓海はひどいヤツだ!」
――あ、拗ねた。
「中学生の慧悟さんに一目惚れしちゃったんだから仕方ないよ」
照れくさいのを隠すように、ボクは慧悟さんの肩に頭もたせかけた。
「そっか。拓海は中学生の俺に一目惚れしちゃったのか。……くそっ! 過去の自分に嫉妬しそうなるのはなんでだ?」
慧悟さんのぼそっと言った言葉に、また笑いのスイッチが入ってしまった。
唇を尖らせて、ボクを睨んでいる慧悟さんは可愛い。
「心配しないで、いまの慧悟さんも好きだから」
「なんだよ、そのついでみたいな言い方。俺は拓海のことものすご~く
愛してるのに……」
ソファにつていたボクの手に慧悟さん手が重ねられ、握り込まれた。
言葉は冗談めかしても、繋いだ手は正直だ。
少し汗ばんでいて、熱い。慧悟さんの真剣さを教えてくれる。
慧悟さんに握られた手を引き抜くと、今度はボクのほうから手をつないだ。
指を絡め合う。
恋人つなぎというらしいけど、このときはまだ、そういう呼び方があることも知らなかった。
近づいてくる足音が聞こえたので、ボクはそのまま目を瞑った。
すると、指のつけ根辺りを慧悟さんの指がもぞもぞと動いてくすぐられる。
いたずらされながら眠ったふりをするのは、結構大変だ。
笑いそうになるのを必死で堪えた。
遠ざかっていく足音を聞きながら、どちらともなく噴き出していた。
「もう、慧悟さんの意地悪!」
「浮気するから、仕返ししてやった。ざまあ見ろ!」
「浮気なんかしないもん」
「中学生の俺に、一目惚れなんかするのが悪い」
さっきの会話が蒸し返され、子どもじみた言い合いが続く。
このときだけは、年齢差を気にしないで済む。
2人でいると、なんて楽しいんだろう。
大好きな人といっしょにいられるボクは、幸せ者だ。
素直な気持ちが言葉となって、ボクの口からこぼれていた。
「……慧悟さん、好きだよ」
「えっ、何だって?」
嘘だ。絶対に聞こえていたはず。
「一生、言ってあげない!」
せっかくのムードをぶち壊される。
ばつの悪さもあって、慧悟さんが謝るまでボクの機嫌は直らなかった。
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