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<ありふれた日常> お好み焼き
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カレーをいっしょに食べた日から、お兄さんはボクんちの子になった。
ボクはお兄さんを「雅樹さん」とよび、雅樹さんはボクを「ユウ」とよんだ。
いっしょにいることが当たり前になり、ボクの生活の一部となった。
翌日から、ボクが部活(英会話部に入ることにした)が終わって家に帰ると、雅樹さんがボクの家で宿題を見てくれ、母さんが仕事から帰ってくると皆で晩ごはんを食べた。
母さんの帰りが遅くなる日は、2人で晩ごはんを作って帰りを待った。
雅樹さんの料理も、母さんに負けてなかった。
食べるだけでなく、料理するのも結構好きらしい。
今日は母さんの帰りが遅くなることはなかったが、ボクのリクエストでお好み焼きにしてもらう。
ボクの好きな、山芋入りの「豚玉」だ。
お父さんの実家が神戸だという雅樹さんのお好み焼きは、本格的だった。
頃合いを見はからって、ホットプレートで焼きはじめる。
「おいしいお好み焼きにするには、山芋をたっぷり入れるのと、粉を練りすぎないのがコツだ……」
得意げに教えてくれる雅樹さんは、持参した2本のコテで、お好み焼きを上手にひっくり返した。
「ただいま!」
明るい声で、母さんが帰ってきた。
ちょうどいい具合に、お好み焼きが焼きあがっている。
「いい匂い。おいしそうね!」
と、言う母さんに。
「ボクの作るお好み焼きは、おいしんです! 神戸のおばあさま仕込みなんですからね。……さあ、焼き好きないうちに、早く食べましょう」
雅樹さんが力説する。
(いま、おばあさまって言った? 雅樹さんて、お坊ちゃまなのかな?)
「おいしい!」
「おいしいわね!」
ボクと母さんは、同時に叫んだ。
雅樹さんが得意げに言うだけあって、本当においしかった。
表面がカリッとしてて、長いもがたくさん入っているからだろう、中はふわふわだ。
ソースは関西で売られているものをベースに、何種類か混ぜた、雅樹さんスペシャルだ。
程よい辛さがおいしい。
雅樹さんは食べやすいように、ホットプレートに生地を小さく伸ばして焼く。
「タネはいっぱい用意してあるから、どんどん食べてね!」
ソース用の刷毛や青のりといっしょにかける鰹節の粉、マヨネーズまで持参してくれた。
たこ焼き器も持ってるらしい。今度は、たこ焼きを焼いてもらおう。
(いいおヨメさんになりそうだ)
料理の上手な、おヨメさんの雅樹さんをちょっとだけ想像したが、ボクの意識はすぐに食欲に取って代わられた。
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