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<芦屋 de お好み焼き>
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楽しい時間は、本当にあっという間だ。
「お夕飯は何がいいかしら?」
お祖母さまに聞かれ、もうそんな時間なのかと驚いた。
「お好み焼きがいいです」
皆は何でもいいと言ったが、ボクは雅樹さんに何度も作ってもらったお好み焼きを思い出した。
あのお好み焼きはお祖母さまに教わったそうだ。雅樹さんの好み焼きも美味しいけど、お祖母さまのお好み焼きも食べてみたかった。
「あら、お好み焼き? 雅樹さんもお好きだったわね。じゃあ、そうしましょう! ……貴子さん、お願いね」
「はい、奥さま。……坊ちゃまのご友人方もいらっしゃることですし、イカ玉と焼きそばのご用意もいたしましょうか?」
「ええ、いいわね。お願いします」
「畏まりました」
貴子さんはお好み焼きの準備に出て行った。
拓海と知紀を招待していっしょに食べたことはあったけど、あのときは雅樹さんが焼いてくれた。
ボクは何回も雅樹さんと作ったことがあるけど、2人は初めてだったので、自分らで焼くことにした。
「ウチでは何枚も食べられるように、小さく焼くのよ」
金属製の小さなボールみたいな容器に、生地と刻んだキャベツと天かす、紅ショウガを入れるとざっと混ぜてホットプレートに流す。このとき、あまり混ぜすぎると、焼き上がったときに硬いお好み焼きになってしまうのだと、お祖母さまに教わった。
ホットプレートを2つ使ってお好み焼きを焼いていていると、お祖父さまが帰って来られた。
「お祖父さま、お帰りなさい」
「こんにちは、お邪魔しています」
「お邪魔します」
「お世話になります」
ボクらが挨拶をすると、
「いらっしゃい。雅樹、お帰り……すまなかったね、留守にして……」
「こんなに賑やかなのは久しぶりだ」と、お祖父さはにこにこしながら、ボクらを歓迎してくださった。
目じりを下げてやさしそうなお顔をされているお祖父さまは、いまも全国的に名前の知られた会社の会長さんをされているそうだ。
「もういい頃よ!」
お祖父さまと話していると、お祖母さまによばれる。
いい具合に焼けたようだ。
ひっくり返すと美味しそうな色に焼き色がついていた。
ボクは何度も雅樹さんと作ったことがあるので、上手にひっくり返すことが出来た。
拓海も初めてとは思えないくらい上手だった。
ただ、知紀はひっくり返すときに少し割れたので、雅樹さんがきれいに直してくれた。
ソースを刷毛で塗り、青のりと鰹節の粉をたっぷりかけて完成だ。
マヨネーズなんかかけない。
ボクは大好きな豚玉にかぶりついた。
「雅樹さんが作ってくれるのとおんなじ味だ。美味しい!」
ボクが感動して言うと。
「そうだよ。僕のお好み焼きは、お祖母さま直伝だからね!」
お祖父さまの晩酌の相手をしながらお好み焼きを焼いていた雅樹さんが、初めて作ってくれたときみたいに自慢げに言う。
雅樹さんの焼いたお好み焼きを美味しそうに食べていたお祖父さまとお祖母様が、楽しそうに笑った。
中学生の食欲はすごかった。
お好み焼きが小さかったこともあって、ボクと知紀は、豚玉とイカ玉を2枚ずつ、焼きそばを1人前をそれぞれ完食した。
ふだんは少食の拓海も、豚玉1枚とイカ玉半分に、焼きそばを小皿に取ってもらって食べた。
いつもより食欲が出たのは、きっと大勢での食事が楽しかったせいだ。
ボクら3人は、思ってた以上に一家団らんと言うものに飢えていたようだ。
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