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<バニラアイス>
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クリスマスが来た。
正確に言うと、クリスマスイブだ。
楽しみにしていたはずなのに、その日が来てみると、クリスマスパーティーを計画したときほど楽しくなかった。
理由は、雅樹さんが風邪で寝込んでいたからだ。
熱は少し下がったみたいだけど、今夜のパーティーには参加出来そうになかった。
拓海たちが来る前に、雅樹さんの様子を見に行くことにした。
その前に冷凍庫からバニラアイスを取り出して、少しだけガラスの器にとった。
アイスとコンビニの袋を持つと、玄関の靴箱の上に置かれている雅樹さんの部屋の鍵を持って自分の部屋を出た。
雅樹さんの部屋は真っ暗だった。
でも、奥の部屋には電気がついているようで、うっすらと明りが漏れている。
ボクの部屋と同じ造りなので、手探りでスイッチの場所を探して玄関の明りを点けた。
部屋に上がると、床が軋む音がした。なるべく音を立てないように奥の寝室まで行く。
雅樹さんは目の辺りまで布団に潜り込んで、眠っているようだ。
おでこに手を当てると、熱はなかった。
そっと触ったつもりだったけど、雅樹さんが目を開けた。
「ごめん、起こした? よかったね、熱が下がって……」
まだ辛いのか、うなずいただけだ。
「バニラアイス持ってきたけど、食べる?」
うなずいたので、スプーンですくって食べさせてあげる。
布団から出した顔が、いつもと違う。寝ていたからなのか、風邪のせいなのか分からないけど、いつもより幼く見えた。
「美味しい?」と聞くと、またうなずいた。
冷たくて美味しかったのか、雅樹さんはアイスを完食した。
食欲が出てきたので、ほっとする。
「もっと食べる?」
今度は首を振った。
「プレゼントはくじ引きにしたんだ。……雅樹さん、クリスマスパーティーに出られないから、先に引かせてあげる」
折り紙で作ったくじが入っている、コンビニのレジ袋を振って見せた。
にこっと笑った顔が、子どもみたいで可愛い。
雅樹さんは袋の中に手を突っ込むと、かき混ぜるようにしてから1枚引いた。
ボクが数字を書いて、四つ折りにしただけのくじには、「2」と書かれていた。
「もうすぐ拓海と知紀が来るから、行くね」
ボクがそう言うと、雅樹さんは残念そうな顔をした。
かわいそうだけど、どうしようもない。後は元気が出そうな言葉を考えるくらいしかなかった。
「……後で、母さんがごちそうとケーキを持って来てくれるからね」
励ましの言葉が思いつかなくて、何気なく掛けた言葉に効果があったようだ。
嬉しそうに笑っている。
その顔はやっぱり可愛くて、困ってしまう。
雅樹さんをギュッと抱きしめたくなったのを、ボクは何とか堪えた。
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