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<大晦日>
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雅樹さんはクリスマスの後も3日ほど寝込んだ。
まだ風邪が治ったばかりなので、お正月は芦屋の家族とではなく、ボクらと過ごすことになった。
だから、いまはスーパーに買い出しに行くために、ボクと買い物リストを作っている。
元日の夜に食べるすき焼きの材料やお菓子なんかを買い物する予定だ。
知紀が手伝ってくれることになっている。
「すき焼き用のお肉は、100グラム1000円のに決まってるんだ。いつも500グラムも買うとあまるくらいだけど、今年は雅樹さんもあの2人もいるから、母さんが1キロ買っといてって……」
「お肉は100グラム1000円のお肉を1キロ。……野菜は白菜1玉と長ネギ2把だけでよかったっけ?」
「それで、よかったんじゃない」
雅樹さんに聞かれる前から頭に浮かぶものがあったけど、ボクは嫌いなので、わざと言わないでおいた。
「しいたけ、忘れないでね」
おせちを作り始めた母さんが、台所から言う。
ちぇっ! 言われてしまった。もうちょっとで、買い物リストから外せたのに……。
「あ、そうだ。しいたけ……もうちょっとで忘れるとこだった」
雅樹さんが買い物リストに「しいたけ」と書くのを、恨めしく見る。
「……しらたきと焼き豆腐と卵、しめのうどんも買っとかないとね。後は、お菓子と飲み物、みかんくらいだね。……お菓子は何にする?」
朝刊に入っていたスーパーのチラシを見ながら、お菓子を何にするか決めていく。
「揚げせんがいいな。……拓海の好きなサブレと知紀のポテチも買わないと」
「揚げせんとサブレとポテチね。笑子さんはイチゴのチョコが好きだから、イチゴチョコっと……リストは、これで完成かな?」
雅樹さんが自分で書いた買い物リストを見直してから、「ほかに何かいる?」とボクに聞いた。
「アイスがいい。チョコがかかったの」
「了解」
買い物するものが決まったので、リストを母さんに見てもらう。
「おみかんはあまり大きくないサイズのを、1箱買ってきて……荷物になるけど、2人だけで大丈夫かしら? やっぱり私も行ったほうがいい?」
「知紀が手伝ってくれるから、大丈夫だよ」
「ああ、よかった。知紀くんが手伝ってくれるなら安心だわ。その間におせちも作れるし……」
不安そうだった母さんが、ほっとした顔になった。
「スーパーの開店時間って、いつもより1時間早くなかったっけ?」
雅樹さんに聞かれて、スーパーに年末年始の営業時間のお知らせが貼られていたのを思い出した。
「うん。入口のところに、お知らせが貼ってあった。確か、9時ってなってた」
「そう。じゃあ、込まないうちに行ったほうがいいかもしれないね」
「お店が開いたら時間に行ったら、空いてるんじゃないかな?」
「そうだね。早く行って、お店の前で開くのを待ってようか?」
「雅樹さん、風邪治ったばっかりなのに、外で待ってても大丈夫?」
「暖かい格好していくから平気だよ」
「じゃあ、開店時間に行こうか。知紀に電話しないとね」
雅樹さんと出掛けようとしていると、デパートから大きな荷物が届いた。
荷物を受け取って、送り先を見ると芦屋からだった。
「母さん、雅樹さん、芦屋の家からだったよ。……あ、お肉だ!」
中身は、すき焼き用のお肉だった。
5人でも食べきれないくらいある。それに、雅樹さんの好きなステーキ用のお肉も入っていた。もちろん、神戸牛だ。
これだけで、いったいいくらくらいするのか、金額を想像するだけで恐ろしいので考えないようにする。
母さんは、さっそく芦屋の家にお礼の電話をしていた。
100グラム1000円のお肉が、高級ブランドに代わったすき焼きはどんな味がするのか、いまから楽しみで仕方がない。
それに、午後から拓海と知紀が泊まりがけで遊びに来て、お正月の間いっしょにいる。
今度のお正月は、いろんな意味でいつもと違っていた。
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