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夕食に、神戸牛のすき焼きを食べた後だった。
「ちょっと部屋に戻ってくる」
雅樹さんが自分の部屋から戻ってくると、20センチ角の白い箱を持って帰って来た。
ケーキの箱のようだ。
雅樹さんは、その箱を拓海に渡した。
拓海が箱から取り出したのは、手作りのデコレーションケーキだった。
「これ、拓海が作ってくれたの?」
「うん。上手に出来なくて、ごめんね」
「ううん。ありがとう。すごくうれしいよ」
拓海の器用さに驚かされる。
後で聞いたら、前の日にスポンジケーキを焼いて、朝から生クリームを泡立てて飾りつけてくれたそうだ。
きれいに3層になっていた。生クリームの間には、いちごと缶詰のみかんと黄桃の刻んだのが入っている。表面全体を生クリームで蔽い、絞り器を使ってきれいにデコレーションした上に、大きないちごが等間隔に並べられていた。
チョコプレートには、ホワイトのチョコペンで「ユウくん おたんじょうびおめでとう」と書かれていた。
雅樹さんにケーキを預けてから、初詣に行ったそうだ。
「ロウソク、立てようぜ!」
知紀が率先して、ロウソクを立ててくれる。
さすがは拓海だ。年の数だけロウソクが用意されていた。
ロウソクに火を灯すと、皆で「ハッピーバースデイ」を歌ってくれた。
歌が終わったのを合図に、ロウソクを吹き消す。今年は1回で全部消せた。
「ユウくん、誕生日おめでとう!」
「ユウ、お誕生日おめでとう!」
一斉に「お誕生日おめでとう」と言ってくれて、拍手された。
待ちに待った瞬間だった。
雅樹さんが、お父さんが使っていたカメラで写真を撮ってくれた。
去年の夏、芦屋から持って帰って来たやつだ。
「皆、ありがとう!」
ボクの誕生日を覚えていてくれて、本当にありがとう。
うれしさで、胸がいっぱいになる。
「これは母さんからのプレゼント」
通学用の白いスニーカーだった。
「母さん、ありがとう」
去年の秋くらいからサイズが合わなくなっていた。ところどころ破れていたので、すごくうれしい。
「これは知紀くんと僕から……」
パタンと閉じられる、2面タイプの写真立てだった。
開くと、夏休みに芦屋で撮った写真が入っていた。
一方には、雅樹さんと芦屋の庭で撮ってもらったもの。もう片方には、貴子さんに撮ってもらった、皆で写っている写真だ。
皆で撮ってもらったものには、お祖父さまとお祖母さまも写っている。皆、笑顔だ。
雅樹さんからのプレゼントはなかった。
風邪で寝込んでいたから、仕方ない。
後で何かプレゼントすると言ってくれたけど、ボクは気持ちだけで十分だった。
最悪の始まり方をしたボクの誕生日だったけど、手作りのケーキ屋や誕生プレゼントを初めてもらったりと、後半は最高だった。
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