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ユウくんたちと話しながら、次の授業がある音楽室に移動しているときだった。
廊下の先から、楠見先生がこちらへ向かって歩いていた。
こういう状況が、一番気まずい。
あれから、楠見先生と学校の外で会う機会はない。
同じ学校で、おまけにクラスの担任なので、先生とは嫌でも顔を合わせなければならない。
せめて以前の状態くらいに戻せないかと、必死で考えを巡らせた。
澄代さんのカレーを持って先生の部屋を訪ねる計画を、何度立ててとり止めたことか。
余計に嫌われたらと思うと、怖くなってできなかった、というのが本当のところだった。
そのうえ先生が、2人で一緒に過ごした時間さえなかったことにしようとしているのが分かったからだ。ボクはそれが悔しくて、許せなくて、意地になった。
楠見先生がその気なら、ボクにだって考えがある!
用事がない限り、自分からはできるだけ話しかけないと決めた。
子どもっぽいように思えるけど、ボクは子どもなんだ、と開き直ることにした。
焦ったってどうしようもないけど、関係の修復ができないまま日にちばかりがどんどん過ぎていき、確実に夏休みが近づいてきている。
この作戦が吉と出るか、凶と出るかは、新学期が始まったときに分かるだろう。
何の効果もなければ失敗だ。ボクの初恋は、このまま終わってしまう。
考えただけでも切なくなった。
楠見先生とすれ違う瞬間、ボクは隣のユウくんに話しかけた。結果的に先生を無視する形になっていた。
視界の端に一瞬映った先生の顔は、なんだか悲しそうだった。
傷つけられたのはこっちなのに、先生がどうしてそんな顔をするんだろう。
大人の人って、本当によく分からない。
それに、ボクはなんで楠見先生なんか好きになってしまったんだろう。
音楽室に着くまでの間、ボクはいまさらなことを考えていた。
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