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そういうこと、ね。
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3年間。
エイタだけは、好きな子の話をしなかった。
俺はというと、馬鹿みたいに、やれA組のあの子だの、やれ野球部のマネージャーだの、好きな子がコロコロと変わって、その度にエイタとビワに聞いてもらっていた。
エイタとビワと俺は、マブダチ。
いつも一緒にいて、驚くことに3年間同じクラスだった。
ビワは純情乙女童貞。
好きになる子は全部地味で、穢れのなさそうな子。
でも、結局、告白する前に、その子がイメチェンをするか、その子に彼氏が出来るか、友達宣言をされる可哀想なビワ。
エイタとビワの距離感は、近いが、俺の方が2人に近かったかもしれない。……というのは、俺の後々の反省録だ。
距離感が近い、というのは、まあ、いわゆるホモに見えるというくらいのことだ。
周りに囃し立てられても、毅然とした態度を取っていれば、それ以上は何も言われない。それが、俺たち3人の見解だった。
だが、ある日。
俺は、見てはいけないものを見てしまった。
「……何してるの?」
ビワが、エイタのジャージの匂いを嗅いでいた。
「えっ、おま、……いたの?」
ビワは馬鹿だ。
エイタの家の洗剤いい匂いだよな、くらいの冗談が言えない。
思わずため息をついてしまった。
誰にも言わないでね、から始まった話は、それから3時間は続いた。(ファミレスにて)
俺は、ビワの要望通り今まで通り接したが、時々お節介をして、ビワに怒られた。
そして、結局、卒業式の日も、ビワはエイタに気持ちを伝えることはなかった。
俺たち3人は、それから何回かしか会っていない。さらにここ5年は会っていないだろう。
高校3年生。18歳の初々しい少年たちは……
三十路に大手をかけた29歳になっていた。
そして、今日、俺はエイタとビワと5年ぶりに会う。
待ち合わせ場所に一番早く着いたのは、俺だった。
その後に、エイタが来る。
「よっ。」
「おお。」
久しぶりの挨拶にしては、フランク過ぎる。
「……結婚したか?」
エイタが喧嘩を売ってくる。
「するわけねーだろ。相手がいねー。」
「ふーん……」
要領を得ない会話。
俺は、エイタが結婚しているのかどうかもわからなかった。
数分後に、ビワがやってきた。
びっくりした。
太ってた。
俺とエイタは大爆笑。
ビワは結婚3年目の1人目が産まれたばかりのクソ幸せな家庭を築いていた。
おそらく、エイタの気持ちは、高校生のいい思い出と化してる。
そんなビワが、酔った勢いで言った言葉に、俺は死ぬほど驚いた。
「おれ、エイタ好きだったけど、シイラが好きなエイタが好きだったんだ。」
爆弾発言。
そのまま、ビワは眠りに入ってしまった。
おれとエイタの間に、気まずい空気が流れる。
「あ、……えっと。」
「好きだ。」
「はぁ」
「シイラがずっと好きだ。」
突然の愛の告白により、俺とエイタは今に至る……
「『今に至る……』じゃ、ねーよ!おい、エイタ。何勝手に、人の日記に追記してんだ。」
「いいじゃん。本当のことなんだから。」
「お前、なんで何年も俺に片想いできたわけ?不思議だわ。」
「自分に片想いしてたわけをよく聞けるね。恥ずかしくはないのね。まあ、いいよ、ゆっくり語り合おうか。まずは、俺がビワにシイラへの思いがバレるところから、話そうか?」
「ちょっと待て、ちょっと待て。かなり、待て。」
「いや、もう十分待った。」
「そうじゃない。なんだ?ビワにバレるって……」
「ああ、ビワにシイラへの気持ちがバレてな。協力してもらった。」
「……」
「まずは、シイラが来そうなタイミングで、ビワに俺のジャージを嗅いでるような格好をしてもらう。俺のことが好きだという。ビワに協力するために、お前は俺のことは警戒せずに接してくれる。ビワとは、正直何もない。ビワは、あの頃から女の子大好きだ。むしろ、俺はビワに脅された。10年後、まだシイラが好きで、ウジウジしてたらバラすって。そしたら、本当にバラしやがった。ビワ、あいつは純情そうに見えて、なかなかやるぞ。」
「……はぁっ?!じゃあ、お前、恋愛話をみんなでしなかったのは?」
「お前が好きなやつの前で、好きなやつの話をするのも、おかしいだろ。」
「確かに。」
「俺はお前が本気で人を好きになったことないの知ってたけどな、やっぱり怖かったから、結構話聞いてたんだぞ。本気で好きになるやつがいそうだったら、早めに潰しておかないとって。」
そういうこと、ね……
だから、俺の周りには、女の子がいなかったんだ。
「シイラ、俺は好きな人の好きな人になりたかっただけだよ。」
「ふーん。」
エイタだけ、3年間、好きな子の話をしなかった。今は、理由がわかる。
でも
そういうことならば……
「悪くはないな。」
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