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京の都の外れ、不動村という場所に大名屋敷にも見劣りしない大きな屋敷があった。多くの男子が生活する部屋の一室で、二人の男が将棋を指していた。
「随分と、この広い屋敷にも、なれたもんだなぁ。」
パチリという木の音が、冬の乾いた空気に響く。
「そうですねぇ。あれこれ事件がありましたけど。今度は何が起きるんでしょうねぇ。」
線の細い男が、相手の打った一手に腕を組む。
「御陵衛士……」
相手がぽつりと呟いた一言に、細い男は目を大きく見開いた。
「え……?」
「近藤さんはそのつもりらしいぞ」
「まさか、だってそこには藤堂くんが」
「総司。近藤さんも平助の事は案じてる。狙ってるのは伊東の首だけさ。」
相手の男は首にトントンと手刀を当てる。優しそうににこりと笑うこの男こそが、鬼の副長こと、僕の主。土方義豊こと、土方歳三である。
「陰気臭い話はこれで終わりだ。飯でも食おう。そうだな。寿司でも食うか。」
「いいですねぇ。久々に食べたいです。」
「テツ!聞こえたか?」
土方さんが大きな声で僕を呼ぶ。ゆっくりと襖をあけて頭を下げると、楽し気な顔をしている細身の男、沖田さんが目に入った。
「寿司ですね。」
「街まで行って買ってこい。」
「わかりました。」
そう答えると、土方さんは着流しの懐から巾着袋を取り出す。
「これに金は入ってるから、後お前の分も買ってこい。特別に食わせてやる。」
「あ、ありがとうございます。」
特別にとか言っているけど、土方さんが寿司をお使いさせるときは必ず食べさせてくれる。ここから歩いて二十分ほどのところにある、魚政という店の松を買って来て、よく沖田さんや永倉さんと一緒に食べていた。
「テツ、余った金で飴でも買ってこい。」
「土方さん。僕はもう子供じゃないんですよ?」
「いいから。飴、好きだろ?」
「は、はぁ」
少し重い、巾着袋を持って僕は外へと今日の街を目指した。
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