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「こんにちは。」
僕は、周りの目を気にせずに彼に挨拶をしてみた。勿論、周りに居た生徒は驚いた顔をしているけど。でも…声を掛けられた本人にまで何こいつ的な目で見られるのは、少し心が痛む。
「…こんにちは。」
まず、一つ目の良い所。見た目に合わず、挨拶を返してくれる所。
「また会ったね。」
「…この前の奴か。」
「え、今思い出したの?」
もしかしたら、彼は避けられているのではなく、避けているのかもしれない。にこにこと反しかけている僕だけど、彼はきょろきょろと周りを気にしている。僕が話しかけているのに、だ。それに、早く僕から離れようと愛想のない返事を返してくる。きっと、これは彼なりの僕に対する気遣いなんだろう。けど、自分かっら話しかけている僕にとっては結構悲しい。多分、僕が周りから避けられないように、変な噂が起きないようになんだろう。それでも、僕は彼の事が凄く気になっている。
彼の世界に僕も入ってみたい。
「…場所、変えないか?」
「あー、うん。そうだね。屋上にでも行く?」
「あぁ。」
一向に離れようとしない僕に諦めがついたんだろうな。僕がそう言い、屋上へと歩き始めると、彼は隣ではなく、僕の二メートル程後ろを歩いて付いて来た。…そこまでする必要はないと思うし、手遅れだと思うんだけどな。彼が後ろを歩くせいか、僕と彼は屋上までスムーズに行く事が出来た。すれ違う視線からはよく端に寄らずに歩けるなみたいな視線を感じた。
お互い一言も喋らず、無言のまま歩いているとあっという間に屋上に辿り着き、初めてであった場所、水タンクの上に僕達は座る。
「此処まで来て、何だけど…。別にこれと言って、用はないんだよね。」
「変な奴。」
「至って普通だよ。」
「それはないな。」
彼は僕を変な奴だと言ってくるけど、僕からしたら君の方が変な用に思う。だってさ、そんなにも僕の事を気にしてくれているんだったらさ、僕が挨拶した時点で僕を無視すればよかったのに。なのに、こうやって人のいない所でだけど、僕と話してくれる。まぁ、これも彼の優しさなんだろうけど。
「お前、何て名前?」
「青空哉太。」
「青空・・・。俺は、谷中悠里。」
「うん、知ってるよ。」
彼は何も言わない。きっと、彼自身がその理由をわかってるんだ。でも、少し違うんだよな。だって、僕は自分で、自分の目で名前を知りに行ったんだから。まぁ、ついさっきの事なんだけど。彼に挨拶をした時、スリッパに書かれている名前を見てちゃんと自分で知ったんだ。まぁ、それまでにクラスメイトから聞いたりもしたけど。自分で調べたには調べたんだ。
パッと、彼を見ると悲しそうな顔をして僕を見ている。きっと、彼自身は今自分がどんな表情をしているのか気付いていない。凄く悲しそうな顔。...笑った顔、心の底から笑った顔が見てみたいな。ううん、僕がそんな笑顔を刺せるとうにしたい。
「あのね、スリッパを見れば名前なんてすぐにわかるんだよ。しかも、簡単な字だから、読み方もわかったし。…あ、そうだ。谷中、一緒に昼ご飯食べよう。」
あの後、僕達は次の授業もサボり、屋上でくだらない、どうでも良い話をしていた。例えば、化学の先生の髪はカツラで時々ズレているだとか、体育の先生が漫画で定番な綺麗な保健医の事を狙っているだとか、本当にどうでも良い話。そんなどうでも良い話を一時間程話してから、僕達は自分の教室に戻った。まぁ、噂が広がるのは凄く早くて、教室に入った瞬間、教室の空気が一転した。
僕には、心の底から一緒にいて楽しいと思えるような友人はいなかったから、別にどうだって良いんだけど。でも、あまりにも居心地が悪すぎて、僕はその一限だけ出て、昼からの授業はサボろうと決めた。だから、まぁ若干道連れというか、仲を深めるために四限目の終わりのチャイムが鳴ってすぐに教室を出て、彼の教室へお昼のお誘いに来てみた。教室の入り口で呼んだのが不味かったのか、一斉にクラスの人達が僕を見る。そして、変えもまた困惑したような顔で僕を数秒見てから鞄を持って、僕の方へと歩いてくる。
「ほんと、変な奴だ。」
「さっき、一緒に一時間サボった仲じゃん。もう、友達だし。昼ご飯の誘いに行っても可笑しくないと思うんだけど。」
そう、若干“友達”という単語に勇気を出して言葉に出してみた。すると、一瞬驚いた顔をしてからパッと逆方向に顔を背けられたけど、嬉しそうな顔をしてくれた。どうやら、彼はツンデレらしい。ちゃんと、一つ一つの表情を見落とさずに見ていけば、彼の誤解が解けると俺は思うんだけど。確かに、少し強面だけど案外顔に感情が出やすい。所詮、外見だけかな。噂の原因は。
案外、彼と居るのは気楽で楽しい。話をしていて、若干壁を感じる時もあるけれど、それはまぁ…いつかぶち壊せばいい事だし。正直、周りに怖がられている人が、実はその事を気にしているっていうのが何気に面白い。僕まで、避けられる事になるんじゃないかと気を遣っているのも、面白い。
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