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窓から見える空が暗くなり始めた頃、僕はそろそろ家に帰ることにした。
「悠里は、体育祭の出る種目決めた?」
「…綱引き。運動、得意じゃないからな。」
「へぇ、意外…なのかな?何か、こうして一緒に居ると何となく納得出来るかも。見た目は男らしいけど、中身は女子だから。」
「…どう反応して良いのかわからない。か、哉太は何に出るんだ。」
「選抜リレーと、借り物競走と、綱引きだよ。まだ、呼び捨て慣れないの?」
「運動神経良いんだな…。なれるわけ無いだろ。」
あと、3週間後に体育祭が行われる。1人最低1種目出たら良いだけなのに、僕は選抜リレーと借り物競争、綱引きの3種目に出さされる羽目となった。至って、普通な、平凡な僕が3種目も。まだ、綱引きだけなら文句はない。それプラス玉入れだとしても。選抜リレーと借り物競走って、足が速い陸上部とか運動部が行くべきだろ。なのに、何故僕が…。(それは、100m走のタイムがトップ5位内に入っていた為である。ちなみに3位。)
小、中とサッカー部ではあったけど、陸上部ではなかったのにな。今は部活に入ってないし。バイトがてらにうちの店手伝ってるし。そのせいで、僕は甘い匂いがすると後ろの席の女子に言われた。何となく、男なのに甘い香りがすると言われるのが嫌で、最近は香水をつけ始めた。香水って、高くて月のお小遣いがあっという間になくなるから…勿体無い。
「悠里ってさ、香水つけてないよね。」
「あぁ、そうだな。そういうの興味ないし。」
「うん、つけない方が良いよ。そのままの悠里の匂いが好きだから。」
「…お前、時々爆弾吐くのやめろよ。」
顔を赤く染めて、口元を手で覆う彼。だって、香水そんなに好きじゃないし。石鹸の香りが好きだから、時々風で漂う彼の匂いは石鹸の良い匂いがして好きだ。きっと、男性の殆どが石鹸の香りが好きだと思う。もしくは、香水をつけていたとしても、ほんの少しふわりと香るぐらいが好きなんじゃないかな。あ、でも、自分と同じ匂いというのも惹かれるかもしれない。
「今日は楽しかった。」
「うん、僕も楽しかった。」
「また…。」
「今度は僕の家にも来てよ。」
「いいのか?」
「勿論。つまらない部屋だけど。甘い物ぐらいなら出せるから。」
「行く。行きたい。」
夕日を背後に嬉しそうに笑う彼は、とても綺麗で絵になる。あぁ、カメラ構えておくべきだった。金髪の髪が、夕日のオレンジ色に染まって、とても綺麗だ。
「送ってくれてありがとう。此処まででいいよ。」
「…わかった。」
「悠里、また明日。気をつけて帰ってね。襲われないように。」
「…また明日、哉太。図体のでかい俺が襲われるわけ無いだろ。貧弱なお前の方が心配だ。」
頭に手を置かれ、何だか馬鹿にされている気分。確かに、僕は君程良い体つきをしてはいないけど。男子の平均体型なのに。
帰るのが遅くならないように、家まで送ってもらわずに途中までにしてもらうことにした。女じゃあるまいし、家まで送ってもらう事はないだろう。男に家まで送ってもらうのも、何か微妙だ。”バイバイ”と手を降ると、少し名残惜しそうに手を振り返される。…何だろ、心臓が苦しくなる。彼と過ごした1日があっという間で、物足りないな。こんなに楽しい日はいつぶりだっけ。
少し歩いて、後ろを振り返る。角を曲がったのか、彼の姿はもうそこにはない。
家に帰ると、父さんも母さんもまだ仕事から帰ってきていなくて、テーブル上にはいつもの様に得意ではない料理が置かれている。…失礼だけど、彼の料理が置かれていて欲しかったと思うのは、最近の事だ。おふくろの味ではなく、彼の味が好き。それぐらい….母さんは料理が得意ではないのだから、仕方ない。
…彼は、もう寮に着いただろうか。今時、メールでというのは珍しいけど…LINEを教えてもらっていないのだから仕方ない。というか、彼の場合LINEを使っていなさそうだけど。
”もう、寮に着いた?”
一文、それだけを書いて送信する。どれぐらいで返事が帰ってくるだろうか。ぼーっと画面を眺めていると、すぐに返事が帰ってきた。
”着いた。お前は?無事に帰れたか?”
”ちゃんと着いたよ。女じゃないんだから、心配しなくても。”
”男だとしても、絶対に襲われないわけではないだろ。”
どこまで彼は心配症なんだ。一人で画面を見ながら、笑ってしまう。僕なんかよりも君の方がよっぽど女性らしいのに。
”悠里が作ったご飯が食べたい。”
”そんなの、明日食えるだろ。”
”毎日、3食食べたいな。”
”…流石に無理だろ。”
”まぁ、そうだよね。”
そうだね。一緒にでも暮らさないと無理だ。
ベッドの上に寝転がり、返事が来なくなった画面を眺める。…そう言えば、エロ本持ってないって言ってたな。僕も持ってないけど。見たこともないって言ってた。興味ないのかな。…どれだけ純粋なんだろう。今時、小学生でも観てたりするぐらいなのに。純粋すぎて少し心配だ。あれ程にまで純粋だと、エロ本を見るんじゃなくてさせる側にしたらどうなるんだろう。少しの事で顔が赤くなるから…気絶でもしてしまうんじゃないだろうか。いや、先に鼻血か?
数分程、返事が帰ってくるのを待ってはみたものの、まだ返事は帰ってこない。…お風呂にでも入ってこようかな。何だか眠くなってきたし。
いつも、石鹸の良い匂いがするけど、どのシャンプーやコンディショナーを使ってるんだろう。女性が使うような奴を使っているのかな。爽やかというか、甘いような…良い匂いだから。とか良いつつ、僕も母さんと同じやつを使っているんだけどね。まぁ、ケーキとかのせいで石鹸の香りなんて残らないけどね。
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