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暗い。
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「ぁ………………」
目の前が真っ暗になる。
心臓を誰かにぎゅっと掴まれたような感覚。
懇願するようなその響きに、俺はまるで魔法でも掛けられたかのように全ての動きを封じられてしまった。
「……、…………」
「ぁ、………ま………って………………」
呆然とする俺に背を向けてのろのろと歩き出す光汰。
咄嗟に口をついて出た弱々しい制止の言葉に、しかし光汰は立ち止まることなく雨の中を進んでいく。
「こ……た……………」
霞む視界の先に光汰の後ろ姿が消えていく。
涙なのか、雨なのか。そもそも自分は泣いているのだろうか。
そんな区別さえ付かなくなり、俺は力の抜けた体を支えることができずにその場にしゃがみこんでしまう。
仄暗い路地裏に降り落ちる水滴は濁った心にどんどんと溜まっていくようで。
……あぁ、
──────太陽が、遠くに行ってしまう。
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