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懺悔。
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クラスに戻ると、俺に気付いた坂口がいつもの調子で声をかけてきた。
「ん、杉野。今日もだめだった?」
「うん………。…っ、はぁぁぁぁぁぁあ…………」
……例の事件が起こった翌日。
俺が何度も家に帰ろうとする足を気力だけで引きずってなんとか学校に行くと、教室では少し怒っているような、ともすれば泣きそうな…とにかく複雑な表情をした坂口が俺を待っていた。
絶対に路地裏へは行かないと約束したにも関わらず堂々と破ってしまった上、気にかけてくれていた光汰とのことだって悪化…修正が効くのかどうかも怪しいほどだ。
殴られるか、無視されるか。
土下座するか、いっそ茶化すか。
坂口、いつものチ〇シャ猫みたいな笑顔はどこいったんだよ?消えちゃった?本当にチェ〇ャ猫みたいだな!などと、寒いボケをかませるほど俺のメンタルは強くできてはいない。
無言の坂口に対して俺が下手に動くこともできずにいると、唐突に腕が高く振り上げられた。
殴られると思いぎゅっと目を瞑り奥歯を強く噛みしめる。
……が、微かに微笑む気配がした後。全く痛くないデコピンを一発俺にお見舞いすると坂口は一言だけ、これも色々な感情が混ざった声で言った。
”心配させんな。”と————。
その時の坂口の顔は少し泣いているようだった。
おそらく坂口は、俺が何を考えてこんなことをしたのかがなんとなく分かっているのだろう。でも自分からは何も聞かない、ただ俺が話してくれるのを待っている。
—————理解してくれる人がいる。
「…俺、皆がどうして坂口に相談したがるのか分かった気がする」
人目のつかない場所へ移動すると俺は何があったのか、洗いざらい全部話した。
昨日のことから、過去のことまで。誰にも話せず、ずっと心の中に溜め込んでいたもの。
「お、俺っ……光汰を、守りたかっただけなのにっ…!怒らせたかった訳じゃ、全然なくて…。悪いのは、全部俺なのに!さ、坂口も怒って当然なのに、優しくするし……!それに甘えてる自分が、本当にっ…情けなくて、っ、最低だッ…!!二人に迷惑かけて、俺……。う…く……ひっく…」
途中から我慢できなくて泣き出してしまい、途切れ途切れにしか言葉が出てこなくなっても、坂口は俺の背中を撫でつつ、辛抱強く聞いてくれた。
全て話終わった後、それまで流れなかった分も外へ出ていくようにとめどなく流れ続ける涙をいつかのように自分の袖で拭き取ると、いつもの人を食ったような笑みではないふわりと優しい笑みを浮かべ、ゆっくりと言い聞かせるように言った。
「…俺の気持ちは最初から何も変わってないよ。杉野のこと応援してる。今回のことで嫌いになることなんてないし、杉野には幸せになってもらいたいってほんとに思ってるから。それに、そんなことより自分のことをもっと大切にしろ…な?うん…大丈夫だって。きっと元に戻れる。俺に出来ることなら、なんでもするからさ」
「っ、さかぐちぃぃぃ………!うっ、ん……あり、がと。おれ、馬鹿で…、…ほんとにっ、ごめん……!っ、」
しゃくりあげながらなんとかそう返すと、せっかくの可愛い顔が台無しだな、と言って少し笑うと坂口はまるで小さい子供を褒める時のように、俺の頭をくしゃりと撫でた。
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