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助言。
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「いつか…自分の気持ちが分からないって、言ってたよな。本当は杉野が自分で見つけるべきなんだろうけど…もう時間もないから、今回だけは手伝わせてくれ。……大宮と喧嘩して、杉野はすごく傷ついた…そうだろ?」
「………う、ん。」
「じゃあもし、今回の喧嘩の相手が、大宮じゃなくて俺だったら?…きっと杉野は、ここまで傷ついては無いんじゃないかな」
「っ、そ、んなこと…!」
ない、と言い切れない自分に酷くショックを受ける。
再び黙りこくってしまった俺を、坂口は少し笑って優しく諭した。
「別にいいよ、分かりきってたことだったし…だからこの話をしたんだ。杉野のせいじゃない。それが多分、正しい反応だしな。」
「正しい…反応?」
「そう、杉野は間違ってない。…でもどうして、大宮の時の方が傷ついてると思う?」
どうして……?なんで、俺は─────。
二人とも大事な友達だし、そこに優劣をつけた覚えはない。
そうだ、友達……友達、なんだ───。
「光汰の方が、前から一緒にいたから……とか?」
「うーん……まぁ、それもあるだろうけど…。俺が思うに、杉野の中で大宮は特別なんじゃないかな。」
「特別?」
「そ、特別に大切。」
「…特別に……、大切…。」
”特別”……とくべつ…………。
その言葉をゆっくりと噛み砕いて飲み込む。
─────────と、
「ぁ………お、れ……。
光汰のこと、好き───、なのか…?…」
はらはらと温かい水が頬をつたって落ちていく。
なんだ、簡単なことだった。
いつから好きだったかなんて、もう忘れてしまった。
あの時も、あの時も……あの時だって。ずっと光汰が一番で、そばにいて。
きっと俺は慣れてしまっていたんだ。一緒に居ることにも────この感情にも。
昔公園で、泣いている光汰に声をかけて、なんとか泣き止んでもらいたくて…家にあったキャラメルをあげた。きょとんとした表情で手の上のお菓子と俺を交互に見ていた光汰は、さっきまであんなに悲しそうだったのに…俺を見て笑ったんだ。すごく、嬉しそうに。その笑顔を見て、俺は───。そうだきっと、あの時から……。
─────でも。
「………坂口、俺……失恋、したんだ…」
回り道をしすぎてしまった。
光汰が何年間も俺に与え続けてくれていた愛情に、鈍感な俺は気付くこともなく。
光汰はもう俺のことなんて────好きじゃない。
親友にも、幼馴染みにも戻れないなら、恋人になんてなれっこない。
ましてや俺も光汰も男同士で…許されるはずもなく。
男の俺に…しかも幼馴染みに、自覚したのは今だとはいえ、何年も前からそういう目で見られてたなんて光汰が知ったら……。
「……………。」
俺はきっと、今度こそ立ち直れない───。
「…杉野……、っ諦めるのはまだ早い。行動する前からそんな風に思うなんて、少なくとも俺の知ってる杉野はしない。…それに、その気持ちは恥じるようなものじゃないよ。赤の他人が言うようなことに、わざわざ耳を傾けてやる義理もない。もっと自分に自信を持て…俺と大宮に嘘ついてでも無理矢理一人で行った時みたいにさ?」
「う、それは……反省してます…。でも……うん、そうだよな。ちょっと弱気になってたかも…よし!俺頑張る!!」
「おー!頑張れよ、若人!あぁ、あともう1つだけ。…あいつは、お前の許しがないと何もできないような忠犬だよ」
「何、忠犬………?」
「まぁ、今は気にするな。」
「う、うん……?…じゃ、行ってくるよ!」
「おう!」
坂口との電話が切れると、俺は時計を確認して走り出した。
第二試合終了まで、あと30分─────。
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