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事情。 *坂口side*
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杉野の気合の入った声を聞いてから、通話終了のボタンを押す。
……上手くいくだろうか。いや、あの二人はただすれ違ってるだけだ。お互いにもっと素直になればきっと…。
「…うん。きっと上手くいく。」
休み明け、初々しいカップルをどうやってからかおうかなどと考えながら、カバーもついていない至ってシンプルな状態のスマホをカーディガンのポケットに仕舞う。
帰宅部のくせに休みの日も学校に来るのなんて、俺くらいだよなー…さすがに。
自分の席に座って休日の静かな教室を見回す。
一人が苦手な俺は、静かすぎる自宅よりも適度に人の気配がする学校や図書館をよく好んで使っていた。
昔は普通……むしろそっちの方が楽だからという理由で、率先して周りの人間を遠ざけていたにも関わらず。
…まぁきっかけはともかく。今では一人でいることに恐怖感さえ覚えるようになってしまっていた。
自分は一人で生きていかなくてはいけない…そう、頭では分かっているが。
憂鬱な気分で思わず天井を仰ぐ。
昨日仮病で早退して…家に居ても学校に居ても、結局考えることは同じか。
…俺は一体いつになったら慣れるのだろうか。ここは…あの学校ではないのに。
「……あれ。」
…遠くから足音が聞こえる。
休日出勤の部活の生徒だろうか。いやでも、教室になんて来るわけないよな…。
あぁ、忘れ物を取りに来たとか?
嫌な予感がしつつも、どこかで曲がってくれないだろうかと期待する。
だんだんと近付いてくる不規則なリズムに、意識せず心拍数が速くなる。
俺の祈りとは裏腹に、全く逸れることなく足音は教室の手前で止まった。
……一瞬の静寂の後。
ガララッ!!
「ッ!……ぁ、ははっ…っ、……なんで…先輩が……ここに…、?」
外れていて欲しかった予想はしかし的確に当たっていて。入り口には、今俺が最も会いたくない人が立っていた。
他学年の教室の扉を勢い良く開けたその人物は、長い前髪の間からいつものように俺を真っ直ぐに見つめていた。
「…………、慧…」
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