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迷い。 *洸太side*
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「大宮ッ、頼む!!」
「っ、はいッ!」
先輩からのパスを受け取り、3Pラインからシュートをする。
無意識に集中力を欠いてしまっていたのか、弧を描いたボールはゴールには入らず勢い良くリングに当たると軌道を変えて落ちていく。
「ッ!リバウンド!!」
「任せろッ…!」
先輩たちがすぐさま俺のカバーに入る。
……今日はずっとこんな調子だった。
希にシュートが決まることもあったが、明らかにいつもより決定率が低い。
チームメイトの支えもあり今の所はなんとか点差は抑えられ、抜いたり抜かれたりの小競り合いが続いていた。
点差はほぼ無い…そう言いつつも、仲間の顔には隠しきれない焦りが浮かんでいる。
1年の様子がおかしい。このままだと負けるかもしれない。
そんな思いが今のチームを支配していた。
俺がチームの足を引っ張ってしまっている事は、誰の目にも明白だった。
「ッ、クソっ…!」
交代させようにも、他の1年はほぼ初心者同然で動ける者はおらず、2·3年は元より人数が少ないため既にコートに出てしまっている。
俺がしっかりしないといけない…。
良い動きが出来ない苛立ちと焦燥を表に出さぬよう、大きく深呼吸をする。
不調の原因は分かっていた。
慢性的な寝不足に、連日のオーバーワーク。そして…
「………春、ちゃん……………」
誰にも聞こえないくらいの小さな声で呟く。
いけない…今は試合に集中するべきだ。
意識しないようすればする程、春ちゃんのことが頭によぎっては思考が霧散していく。
ここを通過しなければ本選へ行くなんて夢のまた夢。
ちゃんと勝って…春ちゃんがいなくても俺は大丈夫だって事、証明しなくちゃいけないのに。
第4クォーター、残り時間はあと5分。
点差は2点…相手が優勢。
このギリギリの状況の中、自分が足手纏いになっていることが悔しくて仕方がない。
俺はそれを振り切るように、再びボールを追い始めた。
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