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緊急。 *光汰side*
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「は、春…ちゃん……、だよね…?」
間抜けにもそんな質問をしてしまったが、思考は至ってクリアだった。
こういうのを僥倖というのだろうか。ハプニングとはいえ、春ちゃんとこんなに接近したのはいつぶりだろう。
…そういえばすっかり忘れていたけど俺、春ちゃんに酷いことをしてしまったんだった。
喧嘩にもならないような、あんな一方的な拒絶…春ちゃんはどう思っているのだろう。どう思って…ここに来たのだろう。
坂口はあんなことを言ってはいたが、俺たちの仲を戻しやすくするために言ったという可能性も、あいつなら捨てきれない。
怒ってる…悲しんでる?俺と関わらずに済んで清清した…とかもあるか?
高速でぐるぐると回る頭の中を知る由もない春ちゃんは、その間にも乱れた息を整え顔を上げた。
「光汰!」
「!な、なに…」
「えと……俺、その…っ、光汰のことが………ぅ…、好き…なんだ……」
「……………………え……」
「お前が俺のことを…、嫌いでも……なんとも思ってなくてもっ…!俺は、お前が………す、き………で………………………」
聞こえているはずなのに上手く変換ができない。
さっきまであんなに動いていた頭はオーバーヒートしたように翻訳機能を停止してしまっていた。
すき……隙?いや、え…すきって……好き…?本当にそう言った…?
何年も自分の中で渦巻いてきた言葉のはずなのに、それが目の前の子から発せられていることが信じられない。
思わず聞き返してしまった俺に、春ちゃんはこれでもかというほど顔を真っ赤にしながらもさらに言葉を重ねようとする。しかし全てを言い終わる前に俯いてしまった春ちゃんに何か返さなければと思い、声をかける。
「えっと…、はる…ちゃん?」
俺の声にまるで反応しない。何かまずかっただろうかと冷や汗が流れるが、よく見ると肩が小刻みに震えている。
「…?どうしたの春ちゃ……ん!?ちょっ、大丈夫!?春ちゃんっ…、春ちゃん!!」
震える肩をそっと揺らすと、元々力が入っていなかったのか華奢な体はぐらりと傾いて受け身も取らず横向きに倒れた。
一体何が起こったのか。焦燥感にただ呼びかけることしかできない俺は、せわしなく目を動かして情報を集めようとする。
心底苦しそうに歪められて大粒の汗が浮かぶ顔とは対照的に、不規則に上下する胸と呼吸は浅い。
「っ、」
非常事態だと認識した俺はすぐさま体を起こして春ちゃんを背負うと、来るときに足を引きずっていたことを思い出す。どこを怪我しているか分からない。
なるべく負担をかけないように配慮しながらも、影響が出ない範囲の最高速度で走り出す。
とにかく会場の医務室に行こう。そこで救急車を呼んでもらって…。
再び回転し出した脳であれこれ考えながらも、心は得体のしれない恐怖と不安で押しつぶされそうだった。
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