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そして昼。
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「……坂口」
「痴話げんかじゃない!!っだいたい、夫婦でもないし…」
坂口は冗談を言いながら歩いて来ると、いつものように俺の前の自分の席に座った。
坂口 慧(さかぐちけい)。
坂口も光汰ほどではないにしろ、女子に人気のイケメンだ。
どこか気だるそうな瞳、目尻には泣きぼくろがあり、少し癖のある黒髪はいつも片方だけ耳にかけていて彼が笑顔を絶やすことは滅多にない。
坂口の人気はただイケメンだからというだけじゃなくて、話しやすい、ってのもあると思う。
男女問わず友達も多く、時々女子の恋愛相談にも乗っている、というのを人づてに聞いたことがある。
彼は今年の春、都会の私立中高一貫校から単身この高校に来たらしく、今は学校付近のマンションで一人暮らしをしている。
前にどうしてそのまま進学せず、公立の普通高校に入学したのか聞いたことがあるけど、その時はなんだかんだ言ってはぐらかされてしまった。
聞かれたくないことだったのかな、とその時はそれ以上は何も言わなかったけど。
基本的に坂口は軽く、いつもへらへらしてるけど、根は真面目でいいやつ…だと、俺は思う。
「で、今日は何があったんだ?」
坂口が面白いものを見るような顔で聞いてくる。
「春ちゃんが何も言わずに俺を置いて登校してったんだよ。日直だとか言って」
光汰が俺と話す時よりも幾分か落ち着いた声音で答えた。
そのことに若干むっとして俺は言い返した。
「だから、仕方なかったんだって。朝起きてから日直のこと思い出して、お前を起こす時間もなかったんだよ。それに、連絡は入れてあるだろ?メール」
「えっ、」
光汰が自分のブレザーのポケットから慌てたようにスマホを取り出す。
しばらく操作していると問題のメールを見つけたらしく、さっと青い顔になると俺に抱きついてきた。
「今気づいた…!怒ってごめん春ちゃん!謝るから、機嫌直して~!」
「だから抱きつくな…。そんなことだろうと思ってたし、別に怒ってない。……そ、それに、元々は俺が忘れてたのが悪いし…」
「は、春ちゃん~!」
「あ、そうだ。今日お前ん家行くから部活終わったら図書室に迎えに来いよ。勉強して待ってる」
そう言って微笑むと光汰はなぜか頬を染める。
「~~~っ!///は、はるちゃ『キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン……』
「あ、予鈴だ。ほら、自分のクラス帰れ」
「えっ。は、はるちゃ~ん……!」
ぐいぐいと自分より体格の良い光汰の体を押すと、カッターシャツの上からでも結構筋肉がついていることが分かった。
そのルックスで、その上細マッチョとか…。
俺なんか筋肉なんてものは欠片もついてないのに…?
「……イケメン滅べ!!」
「ええっ。春ちゃんは筋肉なんてつかなくていいよ?」
力を込めてパンチしたはずなのに光汰は痛がる風もなく大丈夫?と逆に俺の手の心配をしてくる。
対応もイケメン…。
若干ひりひりする手をさすりながら俺は今まで何度言ってきたかも分からない言葉を口にする。
「っ、俺はっ、強くなりたいんだよ……!」
「春ちゃん…」
「おーい、お二人さん?じゃれるのもいいけど、そろそろ自分の席戻んないと5限始まるぞ?」
空気が重くなりかけたところで坂口のからかう声が聞こえた。
「あぁ、うん……そうだな。じゃあ、光汰。また放課後」
「…うん。またね、春ちゃん」
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