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王子様。 *坂口side*
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「っ春ちゃん!!!!」
予想通り、入ってきた勢いのまま眠っている杉野に駆け寄ろうとする大宮の前に立ちはだかる。
「静かにしろ…!杉野が起きるだろ…!?」
「うるさいっ!!」
噛みつくようにそう言ってからはっとしてきまりが悪そうに謝ってくる。
「っ、すまん…」
「いや、大丈夫…気持ちは分らんでもないが、とりあえず今は落ち着け」
「ああ……そうだな。…それで、一体何があったんだよ」
「あー…正直、俺は通りがかっただけだから詳細は分らないんだけど」
そう前置きをして俺は自分が見たことを話した。
端正な顔が怒りでどんどん歪んでいくのを見てこいつは敵に回したくないな、と心の中で密かに思いながら再び口を開いた。
「…まあ、とりあえず杉野を連れて帰れ。やり返そうにも、今は相手の居場所も分からないし…それに。きっと杉野はそんなこと、望んでないと思う。……あと、これはあくまでも俺の推測に過ぎないし関係があるかどうかも分からないから聞き流してくれて構わないんだが……その、おそらく杉野を襲ったやつらは…他校のバスケ部だ。着ていたジャージを、どこかで見た事があった気がするんだ……けど、正確には分からない」
「…………………………………そう、か」
大宮は長い沈黙の後そう頷くと、寝ている杉野の顔を様々な感情がないまぜになった瞳でじっと見つめた。
「…なあ、大宮」
「……何だ」
「お前、杉野のこと……どう思ってるんだ」
「好きだよ…愛してる」
真剣な顔で即答した大宮に、そこまで聞いたつもりないんだけどなーと天井を仰ぎつつ、ふと真っ直ぐに目の前の顔を見つめる。
「……そんなに大事なら、手放すな。今回みたいな事がもう起こらないとは限らない。それと…杉野の目が覚めた時は、ちゃんと側にいてやれよ?」
「ああ…分かってる」
大宮はゆっくりとした足取りで杉野に歩み寄ると、まるで忠誠を誓う騎士か、あるいは赦しを請う宗教徒のように跪いた。
そのまま耳元でごめん、と小さく囁くと、しばらく目を細めて杉野の顔を痛ましげに見つめた後、かかっていた髪を手で避けて額にそっと口づけた。
宝物を扱うかのような丁寧な動作に、見ているこっちの方が恥ずかしくなる。
大宮は杉野を起こさないように自分の背中に背負うと振り返らずにありがとう、と一言だけ言って帰っていった。
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