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素直に。
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「春ちゃん。お風呂沸いたから、もう来ていいよ」
「あ、うん…。分かった」
ドアから顔を覗かせた光汰に呼ばれて、ベッドから降りて歩こうとする、と
ぺたんっ
「………へ…、?あれ…何でっ……?」
思いに反して床にへばりついてしまった足に力を込めて立とうとするが、上手くいかない。
それを何度も繰り返していると、光汰が何も言わずこちらに近付いてきた。
「うわぁっ!!?」
「っと、春ちゃんじっとしてて…。落ちちゃうよ?」
「いや、で、ででもっ!、こ…この格好はっ……!」
突然のお姫様抱っこに動揺していると、光汰がふと寂しそうな顔になった。
「これが一番運びやすいの。嫌、だろうけど…ちょっとの間だから。我慢してて?」
「う…ん。分かった…」
しぶしぶ了承すると、光汰はほっとしたように微笑んでからゆっくりと歩き始めた。
「あ…れ……?」
「ん、どうしたの?」
「あぁ、いや…何でもない」
この感じ……どこかであったような?
でもお姫様抱っこなんて、光汰どころか親にもされたこと(?)なんてないのに…。
もたれ掛かると聴こえてくる心臓の音と、ゆったりとして心地良い揺れに安心感を覚えていると、光汰が立ち止まって声をかけてきた。
「…春ちゃん、着いたよ。じゃあ上がったら教えてね、歩けそうだったらリビングにいるからおいで」
「ん……ありがと」
ふわふわした気分になっていたせいか、いつもは気恥ずかしくてなかなか言えない言葉も口からすんなり出てきた。
そのことが純粋に嬉しくて、つい顔がほころんでしまう。
…いつか、こんな風に何気ない一言でも 素直に光汰に伝えられるようになるといいな……。
俺は心の底からそう思った。
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