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寒さ。
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「こ、光汰っ?ちょっと、待って…!」
慌てて光汰の後を追いかけると靴を履くように促され、テキパキと荷物を渡された。
「春ちゃん、ちゃんと病院にも行くんだよ?」
「わ…分かってるよ」
「うん。じゃあまた明日ね、まだ傷が痛むようなら無理せず学校は休んで」
「いや、学校は行くから大丈夫……そ、れじゃ…またな」
「ばいばい、春ちゃん。家でも安静にしてるんだよ?」
ぱたり、と閉まった扉を少しの間見つめてから踵を返す。
俺と光汰の家は通りを挟んで向かい側にあるから、どっちの家からもお互いの部屋が見える。
家には明かりがついていなくて、母さんはまだ帰ってきていないらしい。
そのことにほっと胸を撫で下ろしながら誰もいない、しんと静まり返った家に足を踏み入れる。
今は誰にも会いたくない…そんな気分だった。
…にしても。さっきのよそよそしい態度は一体何だったんだろう?
首を捻りながら自室に入り、そのままベッドに倒れ込む。
「はぁーー…。………”何か俺に言いたいこととかない”、かぁ……」
どうして急にあんなことを…?
今日の光汰の様子は少し変だった。具体的にはと聞かれたら上手く言えないけど……。
”言いたいこととか…ない?”
そう聞いた時の光汰の苦しそうな声が耳に固くこびりついて離れない。
光汰は俺が襲われたこと、知らないはずじゃなかったのか?
もし知っていたとして、どうしてそれを俺に隠した?
「なんだか今日は…分からないことだらけだ」
もう寝よう、と毛布を手繰り寄せる。
四月ももう終わりだけど、夜はまだまだ寒い。
心地良い毛布の温かさにくるまれながら早くも意識がぼんやりしてきたのを感じる。
『光汰が何を考えているのか分からない』
それがなんだかすごく……寂しい。
俺は緩やかにやってきた眠気に身を任せてそっと目を閉じた。
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