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色彩。
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隣に光汰がいない通学路にはいつまでたっても慣れることができない。
一人だった頃を思い出してしまうから。
それに、誰か話す人がいないとつい余計なことを考えてしまう。
少し憂鬱な登校時間を過ごして教室に入ると、いつもなら本鈴の鳴るぎりぎりに登校してくるはずの坂口が既に席に座っていた。
「あ………あれ、坂口だ。きょ、今日は早いんだな。光汰も坂口も…何かあるのか?」
「ん、おはよー杉野。ちょっと色々事情があってな。”光汰も”ってことは、今日は大宮と一緒じゃなかったんだな」
「……そー。朝練があるんだと。でも今まで行ったことなかったのに……急にどうしたんだろう」
「確かに。でもまぁ、さすがに大会前だしな~。先輩に出ろって言われたんだろ。なんたって、大宮は我が校期待の大型新人様、だからな」
「期待……そっか…う~ん、そうだよなー………」
俺が少し不満そうに納得すると、坂口が目敏く茶化してきた。
「んん?なんだ~?”春ちゃん”は光汰君がいなくて寂しいのかな~??普段あんなにつんつんしてるのにぃ?」
「うっ、うううるさいっ!そんなんじゃないッ、つんつんしてるのは否定できないけど…ただ俺はっ……その…ちょっと、羨ましいなーって……」
「羨ましい?」
最初こそ勢い良く言ったものの、言っているうちにだんだん恥ずかしくなってきて言う声が徐々に小さくなっていく。
…光汰は、
周囲から期待されて、少なからずプレッシャーを感じているはずだ。
でもそれを決して表には出さず、むしろそれ以上の働きをしてみせる。
そんな幼馴染を誇らしいと思う反面、どんどん成長していく光汰に置いていかれるような……そんな気がして。
いろんな感情がごちゃごちゃになって、自分でももうよく分からない。
昔はそんなこと感じずに済んだのに…ただ遊んで、笑って……。
嫌なこともあったけど、光汰の隣にいると安心できたし、一人でいる時も強く在れた。
なのに
羨望、嫉妬、尊敬、反感——————。
成長していくにつれて———歳を重ねるにつれて、いらない感情が自分の中に入り込んできた。
綺麗な水を保つのは難しくても、汚れるのは一瞬だ。
色のついた感情はゆっくり、しかし着実に、一滴一滴俺を汚していった。
光汰は俺のことを”綺麗”だなんて言うけれど。
俺は――――――。
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